会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「確か、エタンセル伯爵家でしょう? キーブルク侯爵と結婚されるまで、エタンセル伯爵のご令嬢は、ハンナ様のお話しか聞いた事がなかったけれど……結婚されたと聞いた時は、本当に驚いたわ」

 複雑な家の事情が重なり、正式な社交界デビューを、ろくろく出来なかった私には、貴族に親しい友人だって居ない。

 キーブルク侯爵家にまるで売られるように嫁いでからというもの、社交の必要に迫られ夜会へ出席しても、話し相手となる友人なんてどこにも居なかった。

 これまでは会場の隅の方で、領地で縁のある貴族との仕事の会話以外は静かに過ごしていた。

 喪明けすぐの夜会で私は再婚する相手を探していると目立たなければいけないと決心し、注目されたくて扇情的な赤いドレスを着て……ええ。そうされたかったはずだった。

 ……だけど、注目されることに慣れていない私は、既にこの場から居たたまれなくなってしまっていた。

「なんと、キーブルク家の未亡人は、これまでは顔が見えなかったが、あのように美しい女性だったのか。これは驚いた」

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