会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 揃いも揃ってぽかんと間抜けな表情を晒す部下を見て、やはり俺には時間が足りなかったのだと冷静に思った。

 俺がいくら優秀だとしても、優秀な部下に育て上げるには、あまりにも月日が足りない。

「……作戦を立てる司令官が居ないとなれば、敵軍は有利と見て浮き足立つはずだ。油断を誘う。俺は死んだように見せかけて、実のところ死んでいない。居ないと思わせて、すべての作戦は万全を期す。少しでもわが軍の犠牲を抑え、この国を守るためには、まず最初に必要なことだ」

「しかし、閣下。それでは、閣下の名誉が……」

「そうです。もし、今回の戦いを勝利に導かれても……それでは、生涯不敗を誇る経歴が笑い者になりましょう」

 まだ分かっていない。死ぬかどうかの瀬戸際の時に、何を言い出すのかと俺は鼻で嗤った。

「何を、馬鹿馬鹿しいことを。このまま正々堂々と向き合えば、敗北確実の戦いを前にして、万が一勝利した時のことを考えているのか。おめでたい頭だ」

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