会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
 まぁ、そうだろうな。何百何千の差ならまだしも、あまりに数が多すぎる。

「……開戦時、俺は敵軍の前で派手に矢を射られ死ぬ。その時は、一旦砦へと兵を引く。狼狽した演技をさせて、相手の油断を誘え。そこからは、籠城しての持久戦へと入る」

「砦へと籠城戦ですか? しかし……今の状況ですと、補給路が確保できません」

「それも計算の内だ。何、向こうで司令官の俺が死んで、統率が乱れると思い込んでくれれば、それで重畳だ。油断した奴らはすぐに総力戦を選びはしまい。そこから時間を掛け、慎重に敵の数を削り、時間を稼いで援軍さえ来てくれれば、反撃に打って出る」

 相手が十万ならば、後は多数の援軍を待つ。近隣の貴族たちも、慌てて出て来るはずだ。そこまでの時間さえ稼げれば、なんとかなる。

 なんとかなる……ではなく、なんとかするが、言葉としては正しいけども。

「閣下……勝てると、思っていらっしゃいますか」

 しんと静まり返った中で、副官ジェームスの言葉に、俺は笑みを見せ鷹揚に頷いた。

「それは、心配するな。俺の作戦がすべて、上手く行けば勝てる」

「おお……!」

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