会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
「良いわ。入って……」

 けれど、扉を開けて堂々とした足取りで入って来たのは、夫アーロンだった。昨夜とは違い、きちんと身嗜みを整えた彼は、朝の眩い光に映える美丈夫だった。

 無造作に切られていた髪も今は短く整えられ、見ただけで胸が高鳴ってしまう程の男性だった。

「……クウェンティン。ブランシュの部屋に居たのか」

「おはようございます。旦那様」

 アーロンは私の顔を見て微笑んでくれたのに、何を言うべきか迷った挙句、何も言えなかった。

 恥ずかしくて目を逸らし、勝手に高鳴る胸を押さえた。

 どうして、彼が近くに居ると、こんなにも胸がドキドキするの……しめつけられるように苦しい……。

 アーロンは近寄って私のベッドに座り、直立不動で立っているクウェンティンに質問をした。

「ちょうど良かった。お前に聞きたかったことがあるんだ……何故、ヒルデガードを殺さなかった? ブランシュに危害を加えれば、誰でも殺して良いと指示していたはずだ」

 え? ……殺しても良いですって?

 私は夫が言ったことを信じられなくて、目を見開いてしまった。

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