まぶしいほど、まっすぐ!
第十一話
〇裁縫科の教室 (午前中)
他の生徒たちが打ち合わせをしている。
珠李の隣には相星、向かいには朝陽、そして金髪にギャルメイクの佳城さち花。
朝陽「ぬおおおお! どうしてだ!」
「どうして夏帆と別のチームなんだ。恨むぞシュンちゃん!」
さち花「バカじゃん」
朝陽「何だと!?」
さち花「モデル科、メイク科、ヘアメイク科、裁縫科からそれぞれ一人ずつ、四人一組になってチームを組んで」
「どのチームが一番モデルを美しくできるか競うわけ」
「だからヘアメイク科の夏帆とアンタが一緒のチームになれるわけないじゃん」
朝陽「そっか」
朝陽は手を合わせて教室の天井を仰ぎ見る。
朝陽「シュンちゃん、ごめん。オレの勘違いだ。許してちょ」
さち花「チョーウケるんですけど」
キャッキャッと騒ぐ朝陽とさち花を横目に、相星が珠李にすり寄る。
相星「よろしくね、夢奈さん」
珠李「こ、こちらこそ……」
さち花が体を乗り出し珠李と相星を見る。
さち花「ねえねえ。モデコンの時にさ、二人とも春風にメイクしてもらったんだよね?」
相星「そだよ」
珠李「う、うん」
さち花「春風、どんな風にメイクしてた?」
「アイツのやり方をちょっとパクってやろうかと思ってさ」
朝陽「おい! 佳城、お主にはプライドはないのか!?」
さち花「いいモノは盗む! それが私の主義なの」
「で、どんなやり方してた?」
相星「どんなって──頬のところはササッとやって、瞼はシュルって感じ?」
さち花「(真剣な表情で)なるほどね」
珠李(伝わってるんだ)
朝陽(伝わるのか)
さち花「てか、このチーム戦。絶対勝つからね!」
朝陽「決まってるだろ!」
さち花「やっぱ、一番のライバルは春風のトコだよね」
朝陽「だな、何せ向こうのモデルはモデル科女子学年一位の白河だし、メイクはこれまた二年男子学年一位の春風」
「そしてヘアメイク科では常に学年トップ5の夏帆ときたもんだ」
さち花「でも、こっちにはモデル科男子学年トップの相星がいる」
「私たちで相星を輝かせるよ!」
朝陽「まかせろ! 相星、クイーンエリザベス号に乗ったつもりでいろよ!」
相星「それは心強いや」
「てことで、ボクからも一ついい?」
朝陽「おうよ」
さち花「何かプランでもあるわけ?」
相星「まあ、それはおいおい話し合うとして」
「ボクのことは、これから『リヒト』って呼んでよ」
「ボクたちはチームなんだから」
朝陽「了解」
さち花「りょ」
相星「夢奈さんも、ね?」
珠李「う、うん」
他の席からコソコソと話し声。
生徒a「あれって二年のモデル科のリヒトくんだよね」
生徒b「カッコよ。顔ちっちゃ!」
生徒c「てか、あれがリヒトくんんおチーム?」
生徒a「リヒトくん以外のメンバー何?」
生徒b「特にあの眼鏡の地味ッ子、リヒトくんの引き立て担当?」
甲高い笑い声が起こる。
珠李は気まずそうにうつむく。
朝陽「おい、夢奈! 聞いてっか!?」
珠李「え? ご、ごめん。な、何だっけ?」
さち花「衣装に使う予算って、どれくらい必要かって話」
珠李「あ、ああ、そっか……」
〇学校の裁縫科の教室 (放課後)
水曜日のこの日、珠李は春風の衣装を持って教室にやって来る。
誰もいない。
珠李は教室に入り、ミシンの前へ。
珠李(春風くん、チーム戦の準備で忙しいよね)
ミシンの手を止める。
珠李(最近、春風くんと全然話せてないな……)
(声をかけても、『忙しいから』って行っちゃうし)
ガラッとドアが開けられる。
珠李は春風が来たのかと思い、そちらを見る。
だが、そこにいたのは相星。
相星「あっ、こんなところにいた。探したんだよ」
珠李「あ、相星くん」
相星「じゃなくて?」
珠李「え? ああ、そ、そっか」
「リ、リヒトくん、だ」
相星「もう、そろそろなれてくんないと」
珠李「ご、ごめん……」
相星「まあ、いいけどね」
「でさ、朝っちが『中打ち上げ』やろっって」
「ホント、打ち上げ好きだよね」
珠李「わ、私は、え、遠慮しようかな」
相星「え? なんで?」
相星は珠李が縫っている服を見る。
相星「あれ? これってボクが着るヤツじゃないよね?」
珠李「こ、これは春風くんのお母さんの誕生日プレゼントで──」
「も、もちろん、チーム戦用の、い、衣装もちゃ、ちゃんと作ってるよ」
相星はため息をつくと、机の端にお尻を乗せる。
相星「夢奈さんさぁ、もう春っちたちに関わるのやめた方がいいと思うよ」
相星、辺りを見回し、誰もいないのを確認。
相星「これ、他の子たちから聞いたんだけどさ」
「春っちたち、夢奈さんのことを利用してるらいいよ」
珠李「り、利用?」
相星「かわいそうな子に親切にしておくとさ。内申点が良くなるからって」
「モデコンの時に、春っちたちが夢奈さんに協力したのもそのためなんだよ」
「陰で『あんなヤツと本気で友達になんかなるわけねえだろ』って言ってるのを、聞いた子がいるらしいよ」
「だからシュンちゃんは、夢奈さんを春っちたちと同じチームにしなかったんだよ」
ミシン台の上の珠李の手が固く握りしめられる。
珠李の手の上に、相星の手が重ねられる。まるで勇気づけるように。
相星「ボクは夢奈さんの味方だからね」
「だからもう、春っちには近づかない方がいい」
「夢奈さんには、傷付いてほしくないんだ」
相星「ボクは夢奈さんの味方だからね」
他の生徒たちが打ち合わせをしている。
珠李の隣には相星、向かいには朝陽、そして金髪にギャルメイクの佳城さち花。
朝陽「ぬおおおお! どうしてだ!」
「どうして夏帆と別のチームなんだ。恨むぞシュンちゃん!」
さち花「バカじゃん」
朝陽「何だと!?」
さち花「モデル科、メイク科、ヘアメイク科、裁縫科からそれぞれ一人ずつ、四人一組になってチームを組んで」
「どのチームが一番モデルを美しくできるか競うわけ」
「だからヘアメイク科の夏帆とアンタが一緒のチームになれるわけないじゃん」
朝陽「そっか」
朝陽は手を合わせて教室の天井を仰ぎ見る。
朝陽「シュンちゃん、ごめん。オレの勘違いだ。許してちょ」
さち花「チョーウケるんですけど」
キャッキャッと騒ぐ朝陽とさち花を横目に、相星が珠李にすり寄る。
相星「よろしくね、夢奈さん」
珠李「こ、こちらこそ……」
さち花が体を乗り出し珠李と相星を見る。
さち花「ねえねえ。モデコンの時にさ、二人とも春風にメイクしてもらったんだよね?」
相星「そだよ」
珠李「う、うん」
さち花「春風、どんな風にメイクしてた?」
「アイツのやり方をちょっとパクってやろうかと思ってさ」
朝陽「おい! 佳城、お主にはプライドはないのか!?」
さち花「いいモノは盗む! それが私の主義なの」
「で、どんなやり方してた?」
相星「どんなって──頬のところはササッとやって、瞼はシュルって感じ?」
さち花「(真剣な表情で)なるほどね」
珠李(伝わってるんだ)
朝陽(伝わるのか)
さち花「てか、このチーム戦。絶対勝つからね!」
朝陽「決まってるだろ!」
さち花「やっぱ、一番のライバルは春風のトコだよね」
朝陽「だな、何せ向こうのモデルはモデル科女子学年一位の白河だし、メイクはこれまた二年男子学年一位の春風」
「そしてヘアメイク科では常に学年トップ5の夏帆ときたもんだ」
さち花「でも、こっちにはモデル科男子学年トップの相星がいる」
「私たちで相星を輝かせるよ!」
朝陽「まかせろ! 相星、クイーンエリザベス号に乗ったつもりでいろよ!」
相星「それは心強いや」
「てことで、ボクからも一ついい?」
朝陽「おうよ」
さち花「何かプランでもあるわけ?」
相星「まあ、それはおいおい話し合うとして」
「ボクのことは、これから『リヒト』って呼んでよ」
「ボクたちはチームなんだから」
朝陽「了解」
さち花「りょ」
相星「夢奈さんも、ね?」
珠李「う、うん」
他の席からコソコソと話し声。
生徒a「あれって二年のモデル科のリヒトくんだよね」
生徒b「カッコよ。顔ちっちゃ!」
生徒c「てか、あれがリヒトくんんおチーム?」
生徒a「リヒトくん以外のメンバー何?」
生徒b「特にあの眼鏡の地味ッ子、リヒトくんの引き立て担当?」
甲高い笑い声が起こる。
珠李は気まずそうにうつむく。
朝陽「おい、夢奈! 聞いてっか!?」
珠李「え? ご、ごめん。な、何だっけ?」
さち花「衣装に使う予算って、どれくらい必要かって話」
珠李「あ、ああ、そっか……」
〇学校の裁縫科の教室 (放課後)
水曜日のこの日、珠李は春風の衣装を持って教室にやって来る。
誰もいない。
珠李は教室に入り、ミシンの前へ。
珠李(春風くん、チーム戦の準備で忙しいよね)
ミシンの手を止める。
珠李(最近、春風くんと全然話せてないな……)
(声をかけても、『忙しいから』って行っちゃうし)
ガラッとドアが開けられる。
珠李は春風が来たのかと思い、そちらを見る。
だが、そこにいたのは相星。
相星「あっ、こんなところにいた。探したんだよ」
珠李「あ、相星くん」
相星「じゃなくて?」
珠李「え? ああ、そ、そっか」
「リ、リヒトくん、だ」
相星「もう、そろそろなれてくんないと」
珠李「ご、ごめん……」
相星「まあ、いいけどね」
「でさ、朝っちが『中打ち上げ』やろっって」
「ホント、打ち上げ好きだよね」
珠李「わ、私は、え、遠慮しようかな」
相星「え? なんで?」
相星は珠李が縫っている服を見る。
相星「あれ? これってボクが着るヤツじゃないよね?」
珠李「こ、これは春風くんのお母さんの誕生日プレゼントで──」
「も、もちろん、チーム戦用の、い、衣装もちゃ、ちゃんと作ってるよ」
相星はため息をつくと、机の端にお尻を乗せる。
相星「夢奈さんさぁ、もう春っちたちに関わるのやめた方がいいと思うよ」
相星、辺りを見回し、誰もいないのを確認。
相星「これ、他の子たちから聞いたんだけどさ」
「春っちたち、夢奈さんのことを利用してるらいいよ」
珠李「り、利用?」
相星「かわいそうな子に親切にしておくとさ。内申点が良くなるからって」
「モデコンの時に、春っちたちが夢奈さんに協力したのもそのためなんだよ」
「陰で『あんなヤツと本気で友達になんかなるわけねえだろ』って言ってるのを、聞いた子がいるらしいよ」
「だからシュンちゃんは、夢奈さんを春っちたちと同じチームにしなかったんだよ」
ミシン台の上の珠李の手が固く握りしめられる。
珠李の手の上に、相星の手が重ねられる。まるで勇気づけるように。
相星「ボクは夢奈さんの味方だからね」
「だからもう、春っちには近づかない方がいい」
「夢奈さんには、傷付いてほしくないんだ」
相星「ボクは夢奈さんの味方だからね」