まぶしいほど、まっすぐ!
第四話
〇学校 月組の教室内 (昼休み)
教室で昼ご飯を食べる生徒たち。
珠李、春風、夏帆、ソナタ、朝陽が集まってランチ中。
春風「お礼?」
珠李「う、うん」
「コ、コンテストでメイクしてもらったから」
「お、お礼がしたくて」
「な、何がいいかなって」
春風「急に言われてもな」
夏帆「おいおい、アタシにはないのかよ、お礼」
珠李「も、もちろん大瀬さんにも」
「な、何かお礼ができればって、お、思ってるよ」
朝陽「じゃ、オレはねえ」
夏帆「ナオトはナシに決まってるだろ」
「なんもやってねえんだから」
朝陽「そんなあ」
ソナタ「わたくしは衣装を作っていただこうかしら」
「デザインはお任せするわ」
夏帆「ソナタはもっとダメだろ!」
「お前の呼びかけで、珠はは無理矢理『モデコン』に出る羽目になったんだから」
ソナタ「あら? 珠李ちゃん、とっても素敵だったじゃない」
「先生方も褒めてらしたわ」
夏帆「(苦々しく)シュンちゃんだけじゃねえか」
「てか、毎度のことだけどど、ソナタんチの弁当ってすげえな」
ソナタ「白河家専属シェフ特製のお重弁当ですわ」
「よろしければどうぞ」
夏帆「え? いいのか? じゃ、遠慮なく」
朝陽「オレも!」
ソナタ「珠李ちゃん、衣装の件、引き受けてくださる?」
珠李「(困ったように)し、白河さんは、す、素敵なお洋服をたくさん持ってるだろうから」
「気に入ってもらえるものが作れるかどうか……」
ソナタ「もちろん材料費は出しますわ」
「それにどんなダメなお洋服でも」
「着こなすのが一流のモデルですもの」
「ですから、気負わなくてもよろしくてよ」
夏帆「珠李、殴っていいぞ」
珠李「お、大瀬さんは?」
夏帆「とりあえず『大瀬さん』は禁止な」
「アタシは珠李って呼ぶ。だからそっちは夏帆な」
朝陽「おいおい、それがお礼? もったいない」
夏帆「なわけないだろ」
「アタシへの礼は、『カットモデルになること』だ」
「ヘアメイク科の連中とかウイッグでやってんだけどさ」
「新鮮味がないんだよ」
珠李「カ、カット……」
夏帆「心配すんな。基本的に髪は切らずにスタイリングするだけだから」
「(意味深に笑いながら)基本的には、な」
朝陽「夏帆! 悪い顔になってんぞ!」
珠李「わ、わかった…せ、僭越ながら」
「おおせ──じゃ、じゃなくて、な、夏帆ちゃんのカットモデルをさせていただきます」
夏奈「よろしい」
朝陽「じゃ、春風は?」
春風「俺?」
「俺はいい──え? ああ、そっか」
「でも、あんなの作れるものなのか? かなり手が込んでんだけど」
朝陽「ヒメ姉さんは何て?」
珠李(ヒメ姉さんって、他のみんなにも認知されてるんだ)
春風「俺も服を作ってもらえってさ」
珠李「ど、どんな服がいいの?」
(春風くんって、普段はどんな服着てるんだろう)
春風はスマートフォンの画面を見せる。
真っ白な燕尾服を着てポーズを取っている舞台役者が映っている。
珠李「は、春風くんも、『妃皇歌劇団』が好きなの!?」
*ナレーション「妃皇歌劇団とは、女性だけで創られた演劇集団のこと」
ソナタ「まあ、そうなの!?」
夏帆「意外だな」
朝陽「言えよ! 今度一緒に舞台を観に行こうぜ」
春風「俺じゃなくて」
「お袋だよ。大ファンでさ」
珠李「は、春風くんの、お、お母さんが?」
春風「ああ。もうすぐ誕生日なんだけどさ」
「プレゼントをどうしようかと思ってたんだ」
「作れそうか? 俺は裁縫のことはまるっきりだけど、ヒメ姉は夢奈ならイケるって言ってんだけそ」
「もちろん俺も材料費は出すよ」
珠李「こ、この衣装なら、たぶん雑誌に型紙が載ってると思う」
*ナレーション「毎月、ファン向けに発行されいる『妃皇fan』という雑誌があり、トップスターが舞台で着た衣装の型紙を縮小したものが掲載されている。コアなファンになると自分で衣装を作り、観劇の際に着用して行ったり、SNSに上げたりしている」
珠李(ヒメ姉さんは、私に期待してくれてるんだ。がんばらなきゃ!)
「あ、後は、は、春風くんの」
「お、お母さんのサイズさえわかれば」
春風「ああ、それならSサイズでいいと思う」
珠李「そ、そうじゃなくて……」
春風「ん?」
珠李「こ、こういう衣装は」
「か、体のパーツごとに測らないと」
春風「そうなの?」
「まいったな。サプライズにしたいんだよな」
珠李「そ、そうなんだ……」
「じゃ、じゃあ、こうしたらどうかな」
「が、学校の課題で衣装を作らなきゃなんだけど」
「ちょ、ちょうどいい体形のモデルさんがいないから」
「は、春風くんのお母さんに、お、お願いする──っていうのは?」
春風「おおっ! それいいな!」
「じゃ、いつ来られる?」
「今日とかでもいいか?」
珠李「だ、大丈夫」
春風「よし、決まりだ!」
「放課後、待っててくれ」
教室のドア付近で生徒が声を上げる。
生徒a「春風くん、今日当番だよね」
「職員室に五時間目の授業の教材取りに行ってね」
春風「いけね!」
「じゃ、夢奈。そういうわけだから」
「あとでな」
珠李「う、うん」
夏帆、肘で珠李を突く。
夏帆「やるじゃんよ、珠李」
珠李「え? や、やるって何が?」
ソナタ「珠李ちゃんって、意外と積極的なんですのね」
「人は見かけによらないものね」
「わたくしの衣装は後回しでよろしくってよ」
珠李「だ、だから何?」
朝陽「まったく、嫁入り前の娘が」
「男の家に押し掛けるとは、けしからんな」
「夏帆。オレんチならいつ来ていいからな」
夏帆「誰が行くか。バーカ」
チャイムが鳴る。
自分の席に着く珠李。
珠李(あれ……?)
見る見る青ざめていく。
珠李(もしかして今)
(私……春風くんの家にお邪魔する約束しちゃった!?)
教室で昼ご飯を食べる生徒たち。
珠李、春風、夏帆、ソナタ、朝陽が集まってランチ中。
春風「お礼?」
珠李「う、うん」
「コ、コンテストでメイクしてもらったから」
「お、お礼がしたくて」
「な、何がいいかなって」
春風「急に言われてもな」
夏帆「おいおい、アタシにはないのかよ、お礼」
珠李「も、もちろん大瀬さんにも」
「な、何かお礼ができればって、お、思ってるよ」
朝陽「じゃ、オレはねえ」
夏帆「ナオトはナシに決まってるだろ」
「なんもやってねえんだから」
朝陽「そんなあ」
ソナタ「わたくしは衣装を作っていただこうかしら」
「デザインはお任せするわ」
夏帆「ソナタはもっとダメだろ!」
「お前の呼びかけで、珠はは無理矢理『モデコン』に出る羽目になったんだから」
ソナタ「あら? 珠李ちゃん、とっても素敵だったじゃない」
「先生方も褒めてらしたわ」
夏帆「(苦々しく)シュンちゃんだけじゃねえか」
「てか、毎度のことだけどど、ソナタんチの弁当ってすげえな」
ソナタ「白河家専属シェフ特製のお重弁当ですわ」
「よろしければどうぞ」
夏帆「え? いいのか? じゃ、遠慮なく」
朝陽「オレも!」
ソナタ「珠李ちゃん、衣装の件、引き受けてくださる?」
珠李「(困ったように)し、白河さんは、す、素敵なお洋服をたくさん持ってるだろうから」
「気に入ってもらえるものが作れるかどうか……」
ソナタ「もちろん材料費は出しますわ」
「それにどんなダメなお洋服でも」
「着こなすのが一流のモデルですもの」
「ですから、気負わなくてもよろしくてよ」
夏帆「珠李、殴っていいぞ」
珠李「お、大瀬さんは?」
夏帆「とりあえず『大瀬さん』は禁止な」
「アタシは珠李って呼ぶ。だからそっちは夏帆な」
朝陽「おいおい、それがお礼? もったいない」
夏帆「なわけないだろ」
「アタシへの礼は、『カットモデルになること』だ」
「ヘアメイク科の連中とかウイッグでやってんだけどさ」
「新鮮味がないんだよ」
珠李「カ、カット……」
夏帆「心配すんな。基本的に髪は切らずにスタイリングするだけだから」
「(意味深に笑いながら)基本的には、な」
朝陽「夏帆! 悪い顔になってんぞ!」
珠李「わ、わかった…せ、僭越ながら」
「おおせ──じゃ、じゃなくて、な、夏帆ちゃんのカットモデルをさせていただきます」
夏奈「よろしい」
朝陽「じゃ、春風は?」
春風「俺?」
「俺はいい──え? ああ、そっか」
「でも、あんなの作れるものなのか? かなり手が込んでんだけど」
朝陽「ヒメ姉さんは何て?」
珠李(ヒメ姉さんって、他のみんなにも認知されてるんだ)
春風「俺も服を作ってもらえってさ」
珠李「ど、どんな服がいいの?」
(春風くんって、普段はどんな服着てるんだろう)
春風はスマートフォンの画面を見せる。
真っ白な燕尾服を着てポーズを取っている舞台役者が映っている。
珠李「は、春風くんも、『妃皇歌劇団』が好きなの!?」
*ナレーション「妃皇歌劇団とは、女性だけで創られた演劇集団のこと」
ソナタ「まあ、そうなの!?」
夏帆「意外だな」
朝陽「言えよ! 今度一緒に舞台を観に行こうぜ」
春風「俺じゃなくて」
「お袋だよ。大ファンでさ」
珠李「は、春風くんの、お、お母さんが?」
春風「ああ。もうすぐ誕生日なんだけどさ」
「プレゼントをどうしようかと思ってたんだ」
「作れそうか? 俺は裁縫のことはまるっきりだけど、ヒメ姉は夢奈ならイケるって言ってんだけそ」
「もちろん俺も材料費は出すよ」
珠李「こ、この衣装なら、たぶん雑誌に型紙が載ってると思う」
*ナレーション「毎月、ファン向けに発行されいる『妃皇fan』という雑誌があり、トップスターが舞台で着た衣装の型紙を縮小したものが掲載されている。コアなファンになると自分で衣装を作り、観劇の際に着用して行ったり、SNSに上げたりしている」
珠李(ヒメ姉さんは、私に期待してくれてるんだ。がんばらなきゃ!)
「あ、後は、は、春風くんの」
「お、お母さんのサイズさえわかれば」
春風「ああ、それならSサイズでいいと思う」
珠李「そ、そうじゃなくて……」
春風「ん?」
珠李「こ、こういう衣装は」
「か、体のパーツごとに測らないと」
春風「そうなの?」
「まいったな。サプライズにしたいんだよな」
珠李「そ、そうなんだ……」
「じゃ、じゃあ、こうしたらどうかな」
「が、学校の課題で衣装を作らなきゃなんだけど」
「ちょ、ちょうどいい体形のモデルさんがいないから」
「は、春風くんのお母さんに、お、お願いする──っていうのは?」
春風「おおっ! それいいな!」
「じゃ、いつ来られる?」
「今日とかでもいいか?」
珠李「だ、大丈夫」
春風「よし、決まりだ!」
「放課後、待っててくれ」
教室のドア付近で生徒が声を上げる。
生徒a「春風くん、今日当番だよね」
「職員室に五時間目の授業の教材取りに行ってね」
春風「いけね!」
「じゃ、夢奈。そういうわけだから」
「あとでな」
珠李「う、うん」
夏帆、肘で珠李を突く。
夏帆「やるじゃんよ、珠李」
珠李「え? や、やるって何が?」
ソナタ「珠李ちゃんって、意外と積極的なんですのね」
「人は見かけによらないものね」
「わたくしの衣装は後回しでよろしくってよ」
珠李「だ、だから何?」
朝陽「まったく、嫁入り前の娘が」
「男の家に押し掛けるとは、けしからんな」
「夏帆。オレんチならいつ来ていいからな」
夏帆「誰が行くか。バーカ」
チャイムが鳴る。
自分の席に着く珠李。
珠李(あれ……?)
見る見る青ざめていく。
珠李(もしかして今)
(私……春風くんの家にお邪魔する約束しちゃった!?)