ひねくれ王子は私に夢中
「ふん、調子に乗ってられるのもいまのうちよ。夏休み明けテストはしょせん夏休み明けテスト、実力テストの前座に過ぎないわ。勝負はこれからよ。不破くんが中間テストで負けたら、ウェディングケーキばりの巨大ケーキを作ってもらうんだから。覚悟しなさい!」
「……なんだろうな。もはや負けフラグにしか聞こえない。中間テストでまた泣く未来しか見えない」
「そこ! 遠い目をしない! まるで見てきたかのように未来を語らない! 今度こそは絶対絶対負けないんだから――ねえちょっと聞いてる!?」
「はいはい聞いてる聞いてる頑張ってー」
「棒読み!」
「いやーだって、『しょせん前座』の夏休み明けテストでボロ負けしてボロ泣きした人にそんなこと言われても……」
「ボ、ボロ負けじゃないし!! 485点も取ったし!! 確かに泣いてはしまったけどボロ泣きとまでは言わな……言わないはずだし!!」
「ほら、自分でも自信ないじゃん。あれはボロ泣きの範疇に含まれるでしょ。こっちは大声で喚き散らされて思いっきり揺さぶられたんだよ?」
「………………」
「そうだ、教室に戻ったらあの場にいた全員に『あれはボロ泣きだと思いますか』アンケート取ってみよう」
わざとらしく大袈裟な動作で手を打つ秀司を見て、とうとう沙良は頭を下げた。
「……すみませんボロ泣きでした認めますから止めてください……」
「うむ、わかれば良い。許す」
「だからなんで偉そうなのよ……そしてなんで満足そうなの……私を屈服させるのがそんなに楽しい?」
「うん、とっても。」
光り輝く太陽のような笑顔を見せつけられては、それ以上何も言えず、沙良は渋面になってマスカットのタルトを口に運んだ。
「……美味しい……」
さすが行列のできる有名菓子店のタルトだ。
マスカットと果肉入りジャムとサクサクしたタルトの生地は口の中で絶妙なハーモニーを奏で、たちまち沙良を笑顔にさせた。
「気に入ってもらえたみたいで良かった。まあ、どんな菓子も委員長の手作りケーキには敵わないだろうけどね。何て言ったってこれは世界に一つしかないから」
秀司は沙良の反応を見て微笑み、チョコレートケーキを頬張った。
「……褒めたって何も出ないわよ」
(有名店のお菓子が敵わないとか!! 頑張った甲斐があったー!!)
口ではつれないことを言いつつ、心の中では涙を流して万歳三唱する。
四日間の努力はいまこのときを持って報われた。
生徒たちの騒がしいお喋りを聞きながら、互いにお菓子を堪能する。
この時間は沙良にとって宝物だ。
この時間だけは人気者の秀司を独占することができるのだから。
タルトを食べながら、こっそり視線を上げて秀司を見つめる。
三駒高校の食堂は吹き抜け構造になっていて、ガラス張りになった一面からは丁寧に手入れされた中庭が見える。
「……なんだろうな。もはや負けフラグにしか聞こえない。中間テストでまた泣く未来しか見えない」
「そこ! 遠い目をしない! まるで見てきたかのように未来を語らない! 今度こそは絶対絶対負けないんだから――ねえちょっと聞いてる!?」
「はいはい聞いてる聞いてる頑張ってー」
「棒読み!」
「いやーだって、『しょせん前座』の夏休み明けテストでボロ負けしてボロ泣きした人にそんなこと言われても……」
「ボ、ボロ負けじゃないし!! 485点も取ったし!! 確かに泣いてはしまったけどボロ泣きとまでは言わな……言わないはずだし!!」
「ほら、自分でも自信ないじゃん。あれはボロ泣きの範疇に含まれるでしょ。こっちは大声で喚き散らされて思いっきり揺さぶられたんだよ?」
「………………」
「そうだ、教室に戻ったらあの場にいた全員に『あれはボロ泣きだと思いますか』アンケート取ってみよう」
わざとらしく大袈裟な動作で手を打つ秀司を見て、とうとう沙良は頭を下げた。
「……すみませんボロ泣きでした認めますから止めてください……」
「うむ、わかれば良い。許す」
「だからなんで偉そうなのよ……そしてなんで満足そうなの……私を屈服させるのがそんなに楽しい?」
「うん、とっても。」
光り輝く太陽のような笑顔を見せつけられては、それ以上何も言えず、沙良は渋面になってマスカットのタルトを口に運んだ。
「……美味しい……」
さすが行列のできる有名菓子店のタルトだ。
マスカットと果肉入りジャムとサクサクしたタルトの生地は口の中で絶妙なハーモニーを奏で、たちまち沙良を笑顔にさせた。
「気に入ってもらえたみたいで良かった。まあ、どんな菓子も委員長の手作りケーキには敵わないだろうけどね。何て言ったってこれは世界に一つしかないから」
秀司は沙良の反応を見て微笑み、チョコレートケーキを頬張った。
「……褒めたって何も出ないわよ」
(有名店のお菓子が敵わないとか!! 頑張った甲斐があったー!!)
口ではつれないことを言いつつ、心の中では涙を流して万歳三唱する。
四日間の努力はいまこのときを持って報われた。
生徒たちの騒がしいお喋りを聞きながら、互いにお菓子を堪能する。
この時間は沙良にとって宝物だ。
この時間だけは人気者の秀司を独占することができるのだから。
タルトを食べながら、こっそり視線を上げて秀司を見つめる。
三駒高校の食堂は吹き抜け構造になっていて、ガラス張りになった一面からは丁寧に手入れされた中庭が見える。