ひねくれ王子は私に夢中
「いや、不本意ならいいよ。」
秀司はバッサリ一刀両断。
ピシッと、沙良は後ろ髪を払うポーズのまま凍り付いた。
「え? いや、あの、でも――」
高飛車な態度はどこへやら、一転してオロオロし始めた沙良に向かって、秀司は笑顔でひらひらと片手を振った。
「無理に付き合う必要ないから。姫宮さんがダメなら他の子に頼むし、本当に気にしないで」
「え、あの、そんな」
(このままじゃ本当に不破くんが誰かとカップルになってしまう!!)
身体中から汗が噴き出し、高速で回転する思考回路はもはやショート寸前。
狼狽している沙良を無視して、秀司はにこにこしながら胸の前で両手を合わせた。
「横溝さんとか田中さんとかもいいよね、可愛いし。そういえばおとつい告白してきた一年の子も可愛かったな。あの子なら頼めばすんなりOKしてくれそう。性格も素直そうで良い子っぽかったし、文化祭の雰囲気に流されてそのまま付き合っちゃうのもありかも――」
「………………っ、待って!!」
沙良は跳ねるように立ち上がった。
彼の元へ行く時間すら惜しく、飲食物を横に退けて大きく上体を倒し、テーブルに腹をくっつけ、両手で挟むようにして秀司の手を握る。
「何?」
こちらを見返す秀司の瞳は凪のように静かだ。
沙良にもわかっている。
ここが正念場だ。
「……私にやらせて。偽彼女役」
羞恥に頬を染めながら、それでも目を逸らさずに言う。
「それは、委員長だから? 義務として、仕方なく?」
秀司に表情は無い。
意識して表情を消しているようにも見える。
「いいえ。委員長としての立場なんて関係なく、純粋に、私が、その役をやりたいの」
彼の両手を包み込む手に力を込める。
顔は熱く、心臓は口から飛び出してしまいそうだが、それでも伝えたい言葉があった。
「私じゃ力不足なのはわかってる。私は美人じゃないし学力でも不破くんには敵わない。でも、頑張るから。いいえ、頑張らせて。私きっと、不破くんと並んで立ってても恥ずかしくない人間になるから……お願い」
切実に訴えると、ふっと秀司の頬が緩んだ。
「馬鹿だなあ。委員長はいまのままで充分魅力的なのに。だから俺は頼もうとしたんだよ?」
秀司は両手を引いて沙良の手の中から逃れ、改めて沙良の右手を握った。
「引き受けてくれてありがとう。よろしく」
秀司の顔に笑みが浮かぶ。
それを見て、緊張に強張っていた沙良の顔も綻んだ。
「ええ」
しっかりと手を握り返してから椅子に座り、上機嫌で残っていた栗のタルトを平らげる。
すると、それを待っていたように秀司が言った。
秀司はバッサリ一刀両断。
ピシッと、沙良は後ろ髪を払うポーズのまま凍り付いた。
「え? いや、あの、でも――」
高飛車な態度はどこへやら、一転してオロオロし始めた沙良に向かって、秀司は笑顔でひらひらと片手を振った。
「無理に付き合う必要ないから。姫宮さんがダメなら他の子に頼むし、本当に気にしないで」
「え、あの、そんな」
(このままじゃ本当に不破くんが誰かとカップルになってしまう!!)
身体中から汗が噴き出し、高速で回転する思考回路はもはやショート寸前。
狼狽している沙良を無視して、秀司はにこにこしながら胸の前で両手を合わせた。
「横溝さんとか田中さんとかもいいよね、可愛いし。そういえばおとつい告白してきた一年の子も可愛かったな。あの子なら頼めばすんなりOKしてくれそう。性格も素直そうで良い子っぽかったし、文化祭の雰囲気に流されてそのまま付き合っちゃうのもありかも――」
「………………っ、待って!!」
沙良は跳ねるように立ち上がった。
彼の元へ行く時間すら惜しく、飲食物を横に退けて大きく上体を倒し、テーブルに腹をくっつけ、両手で挟むようにして秀司の手を握る。
「何?」
こちらを見返す秀司の瞳は凪のように静かだ。
沙良にもわかっている。
ここが正念場だ。
「……私にやらせて。偽彼女役」
羞恥に頬を染めながら、それでも目を逸らさずに言う。
「それは、委員長だから? 義務として、仕方なく?」
秀司に表情は無い。
意識して表情を消しているようにも見える。
「いいえ。委員長としての立場なんて関係なく、純粋に、私が、その役をやりたいの」
彼の両手を包み込む手に力を込める。
顔は熱く、心臓は口から飛び出してしまいそうだが、それでも伝えたい言葉があった。
「私じゃ力不足なのはわかってる。私は美人じゃないし学力でも不破くんには敵わない。でも、頑張るから。いいえ、頑張らせて。私きっと、不破くんと並んで立ってても恥ずかしくない人間になるから……お願い」
切実に訴えると、ふっと秀司の頬が緩んだ。
「馬鹿だなあ。委員長はいまのままで充分魅力的なのに。だから俺は頼もうとしたんだよ?」
秀司は両手を引いて沙良の手の中から逃れ、改めて沙良の右手を握った。
「引き受けてくれてありがとう。よろしく」
秀司の顔に笑みが浮かぶ。
それを見て、緊張に強張っていた沙良の顔も綻んだ。
「ええ」
しっかりと手を握り返してから椅子に座り、上機嫌で残っていた栗のタルトを平らげる。
すると、それを待っていたように秀司が言った。