ひねくれ王子は私に夢中
「沙良って呼んでいい?」
不意打ちのように名前を呼ばれて、ぎょっとする。
「……いまなんて?」
「いや、付き合ってるふりをするなら委員長って呼び方だと他人行儀かなと思ったんだけど。嫌なら委員長のままで行くよ」
「……いいえ、少し驚いただけ。いいわよ。沙良で」
「俺のことも秀司って呼んでみる?」
「しゅ……秀司くん」
頬が熱を帯びるのを止められない。
「呼び捨てでいいよ」
「……秀司」
「そうそう。抵抗がないならお互いにそれでいこう」
秀司は綺麗に笑った。
彼自身には全く抵抗がないことがわかって、爆発的に心拍数が上がった。
顔を合わせていることに耐えられなくなり、眼鏡を外してテーブルに置き、両手で顔を覆う。
触れた頬は燃えそうなほど熱かった。
「沙良?」
不思議そうな声がする。
「なんでもない」
ぶんぶんと頭を振り、頬を押さえたまま身体を90度回転させて姿勢を低くする。
そんなことをしても秀司の視界から逃れられるわけがないのだが。
(ひええええいいのかなあ本当にいいのかなあ私が、私なんかが偽とはいえ、約一ヶ月の期間限定といえ、不破くんの彼女役なんて!! どうしよう、夢でも見てるのかも? ああこの際夢でもいい、夢ならどうか覚めないで。だって本当、ああもう本当にどうしよう、彼女とか! 彼女とか!! きゃー!!)
身悶えていると、小さな笑い声が聞こえた。
顔を上げれば、秀司が堪えきれないといった様子で笑っていた。
「……なんで笑うのよ」
背筋を伸ばして眼鏡を取り上げ、顔に装着し、身体ごと彼に向き直る。
ぼやけていた視界がクリアになり、笑う秀司の顔もよく見えた。
「可愛いなって思っただけ」
「!! か、可愛くなんてないし! 私なんかちっとも、全然可愛くないし!」
「はいはい可愛い可愛い」
「だ、だから可愛いとか言わないで!! 自分のほうが超絶美人なくせに!! 本物の美人に可愛いとか言われても嫌味にしか聞こえないから止めて!!」
「えー、そんなつもりないのに。俺はただ事実を言ったまでで」
「いいから止めてってば!! これ以上言うなら偽彼女役を下りるわよ!?」
「それは嫌だけど、それって沙良的にも大丈夫? 俺が他の子とイチャイチャしても精神崩壊しない?」
「……。大丈夫……だもん……」
「あ、泣いた」
「泣いてません!! 断じて泣いてませんから!!」
「沙良ってほんと俺のこと好きだよね」
「す、好きじゃない!! 何度も言うけど、ほんとに、断じて好きとかじゃないから勘違いしないでっ!!」
不意打ちのように名前を呼ばれて、ぎょっとする。
「……いまなんて?」
「いや、付き合ってるふりをするなら委員長って呼び方だと他人行儀かなと思ったんだけど。嫌なら委員長のままで行くよ」
「……いいえ、少し驚いただけ。いいわよ。沙良で」
「俺のことも秀司って呼んでみる?」
「しゅ……秀司くん」
頬が熱を帯びるのを止められない。
「呼び捨てでいいよ」
「……秀司」
「そうそう。抵抗がないならお互いにそれでいこう」
秀司は綺麗に笑った。
彼自身には全く抵抗がないことがわかって、爆発的に心拍数が上がった。
顔を合わせていることに耐えられなくなり、眼鏡を外してテーブルに置き、両手で顔を覆う。
触れた頬は燃えそうなほど熱かった。
「沙良?」
不思議そうな声がする。
「なんでもない」
ぶんぶんと頭を振り、頬を押さえたまま身体を90度回転させて姿勢を低くする。
そんなことをしても秀司の視界から逃れられるわけがないのだが。
(ひええええいいのかなあ本当にいいのかなあ私が、私なんかが偽とはいえ、約一ヶ月の期間限定といえ、不破くんの彼女役なんて!! どうしよう、夢でも見てるのかも? ああこの際夢でもいい、夢ならどうか覚めないで。だって本当、ああもう本当にどうしよう、彼女とか! 彼女とか!! きゃー!!)
身悶えていると、小さな笑い声が聞こえた。
顔を上げれば、秀司が堪えきれないといった様子で笑っていた。
「……なんで笑うのよ」
背筋を伸ばして眼鏡を取り上げ、顔に装着し、身体ごと彼に向き直る。
ぼやけていた視界がクリアになり、笑う秀司の顔もよく見えた。
「可愛いなって思っただけ」
「!! か、可愛くなんてないし! 私なんかちっとも、全然可愛くないし!」
「はいはい可愛い可愛い」
「だ、だから可愛いとか言わないで!! 自分のほうが超絶美人なくせに!! 本物の美人に可愛いとか言われても嫌味にしか聞こえないから止めて!!」
「えー、そんなつもりないのに。俺はただ事実を言ったまでで」
「いいから止めてってば!! これ以上言うなら偽彼女役を下りるわよ!?」
「それは嫌だけど、それって沙良的にも大丈夫? 俺が他の子とイチャイチャしても精神崩壊しない?」
「……。大丈夫……だもん……」
「あ、泣いた」
「泣いてません!! 断じて泣いてませんから!!」
「沙良ってほんと俺のこと好きだよね」
「す、好きじゃない!! 何度も言うけど、ほんとに、断じて好きとかじゃないから勘違いしないでっ!!」