ひねくれ王子は私に夢中
「あたしが不破くんに触る度に嫌そうな顔するくせに。本当に素直じゃないんだから」
「い、嫌そうな顔なんてしてないわよ! 演技指導のためだってちゃんとわかってるもの!」
「なら、あたしはこれからも遠慮なく不破くんに触るけど、いいのね?」
確認するように瑠夏は沙良の目を見つめた。
「もちろんいいわよ。演技指導のためだもの」
頷く。と。
「……ふうん?」
瑠夏は悪だくみを思いついた子どものように怪しく笑い、立ち上がった。
何をするのかと思えば、瑠夏は秀司の傍に座り、彼の腕にぴとっとくっついた。
「――!! ちょっと!? いまは演技指導の時間じゃないでしょ!? 何くっついてるの!?」
泡を食って叫ぶ。
「ねえ不破くん、もう一回あたしの頭を撫でてくれる?」
「いいよ」
秀司はあっさり言って瑠夏の頭を撫でた。
「ああああ!! 一度ならず二度までも!!」
瑠夏が気持ち良さそうに目を細めるものだから、堪らず沙良は立ち上がった。
「秀司もリクエストされたからってなんで撫でるのよ!? わた、私の時はシュシュを軽く指先で撫でただけだったのに! 私が彼女なのに!! この浮気者!!」
涙目になって叫ぶ。
「沙良は不破くんに惚れてないんでしょ? ならあたしが引っ付いても良くない? いますぐ破局して良くない?」
瑠夏は秀司の腕に自分の腕を絡め、さらに密着して首を傾げ、勝ち誇ったように笑った。
(なにその笑顔!? なんで秀司は瑠夏を拒まないのよ!? まんざらでもないってことなの!?)
「良くないぃっ!! いまは私が秀司の彼女なのお!! 瑠夏がライバルになるなんて洒落にならないわよ!! 私に勝ち目なんかないじゃない!!」
「あら、自信がないのね? じゃあ本気で落としちゃおうかしら……」
「嫌ああああああ!!?」
瑠夏が秀司の頬に手を添え、見せつけるようにことさらゆっくりと顔を近づけたため、沙良は盛大な悲鳴を上げた。
「何する気なのよ秀司に触らないで!! 離れて!! 離れてって言ってるでしょ!?」
泣きながら沙良は瑠夏を引き剥がし、空いたスペースに自分の身体を割り込ませ、全力で秀司を抱きしめた。
秀司を力いっぱい抱きしめるなど通常では考えられないことだが、いまは緊急事態だ。
恥ずかしいだのなんだの言っていられない。
毛を逆立てた猫のように、ふーふーと荒い息を吐いて沙良は瑠夏を威嚇した。
瑠夏は秀司に「これでちょっとはお礼になったかしら?」という視線を向け、秀司はこっそり親指を立てた。
とにかく秀司を守ろうと必死な沙良は二人のやり取りに気づかず、大和だけが肩を震わせていたのだった。
「い、嫌そうな顔なんてしてないわよ! 演技指導のためだってちゃんとわかってるもの!」
「なら、あたしはこれからも遠慮なく不破くんに触るけど、いいのね?」
確認するように瑠夏は沙良の目を見つめた。
「もちろんいいわよ。演技指導のためだもの」
頷く。と。
「……ふうん?」
瑠夏は悪だくみを思いついた子どものように怪しく笑い、立ち上がった。
何をするのかと思えば、瑠夏は秀司の傍に座り、彼の腕にぴとっとくっついた。
「――!! ちょっと!? いまは演技指導の時間じゃないでしょ!? 何くっついてるの!?」
泡を食って叫ぶ。
「ねえ不破くん、もう一回あたしの頭を撫でてくれる?」
「いいよ」
秀司はあっさり言って瑠夏の頭を撫でた。
「ああああ!! 一度ならず二度までも!!」
瑠夏が気持ち良さそうに目を細めるものだから、堪らず沙良は立ち上がった。
「秀司もリクエストされたからってなんで撫でるのよ!? わた、私の時はシュシュを軽く指先で撫でただけだったのに! 私が彼女なのに!! この浮気者!!」
涙目になって叫ぶ。
「沙良は不破くんに惚れてないんでしょ? ならあたしが引っ付いても良くない? いますぐ破局して良くない?」
瑠夏は秀司の腕に自分の腕を絡め、さらに密着して首を傾げ、勝ち誇ったように笑った。
(なにその笑顔!? なんで秀司は瑠夏を拒まないのよ!? まんざらでもないってことなの!?)
「良くないぃっ!! いまは私が秀司の彼女なのお!! 瑠夏がライバルになるなんて洒落にならないわよ!! 私に勝ち目なんかないじゃない!!」
「あら、自信がないのね? じゃあ本気で落としちゃおうかしら……」
「嫌ああああああ!!?」
瑠夏が秀司の頬に手を添え、見せつけるようにことさらゆっくりと顔を近づけたため、沙良は盛大な悲鳴を上げた。
「何する気なのよ秀司に触らないで!! 離れて!! 離れてって言ってるでしょ!?」
泣きながら沙良は瑠夏を引き剥がし、空いたスペースに自分の身体を割り込ませ、全力で秀司を抱きしめた。
秀司を力いっぱい抱きしめるなど通常では考えられないことだが、いまは緊急事態だ。
恥ずかしいだのなんだの言っていられない。
毛を逆立てた猫のように、ふーふーと荒い息を吐いて沙良は瑠夏を威嚇した。
瑠夏は秀司に「これでちょっとはお礼になったかしら?」という視線を向け、秀司はこっそり親指を立てた。
とにかく秀司を守ろうと必死な沙良は二人のやり取りに気づかず、大和だけが肩を震わせていたのだった。