ひねくれ王子は私に夢中
「彼女になってって言われて、そこで感動に涙ぐんで『はい』って言える子なら不破くんも余計な苦労せずに済んだのにねえ。本当に、こんなクッッソ面倒くさい子のどこがいいんだか……不破くんならどんな女も選び放題、選り取り見取りなのにねえ……ふ。蓼食う虫も好き好き、か……」
「もおおお!! 遠い目をしてぶつくさ言わないでよお!! 私が悪かったわよおお!!」
沙良は半泣きで瑠夏の腕を掴み、激しく揺さぶった。
「で」
そのたった一言で大和は自分に注意を戻させた。
そろそろ付き合うのが面倒くさくなったらしい。
「仮の彼女からステップアップして本物の彼女になってもらうには、花守さんに自信をつけてもらうしかない。文化祭という一大イベントで一緒に踊って、皆から祝福してもらうことで、秀司は花守さんが自分の彼女に相応しい女性であることを証明しようとした。ダンスの練習と並行して花守さんの店でバイトすることにしたのは、花守さんの妹さんに『バイトが急に辞めた上に姉まで怪我で働けなくなって店が回らず困ってる』って聞いたから。もちろん、バイトついでに花守さんの家族と仲良くなって外堀を埋める魂胆もあったと思うよ」
(……どうして花守食堂で働くことにしたのかと聞いたとき、秀司は社会勉強と小遣い稼ぎのためだと答えたのに)
沙良は目を伏せた。
秀司の家は金持ちだ。
高校生の身分でレンタルスタジオを何の迷いもなく借りられるくらいの額を小遣いとして貰っているのだから、働く必要なんてない。
社会勉強がしたいなら片道一時間もかけて花守食堂に通わず、近くの店で働けばいいのだ。
そもそも秀司なら肉体労働などせずとも、割の良いバイトはいくらでもあるだろう。
(秀司は本当に、私のことを、私のことだけを想って行動してくれてたんだ……)
知らなかった。
自分がこんなにも深く愛されていたなんて。
いや、知ろうともしなかった。
自分はダメな人間だからと言い訳して。
秀司に相応しくない女だと端から決め付けて、本気で愛されている可能性から目を背けた。
「……本当に、全部私のためだったのね」
涙声で言う。
瑠夏たちは沙良を見つめるばかりで何も言わなかった。
それが答えだった。
「……あのね」
沙良は目尻に溜まった涙を拭い、意を決して口を開いた。
「その。私ね。秀司のこと何とも思ってない、とか、口では可愛くないことばっかり言ってるけど。本当は……秀司のことが好き、なの」
顔から火が出そうだ。
(ああああああ言っちゃったーーー!!)
沙良は頬を押さえて身悶えするくらい恥ずかしかったのだが――
「「知ってる。」」
二人の声は見事にハモった。
「もおおお!! 遠い目をしてぶつくさ言わないでよお!! 私が悪かったわよおお!!」
沙良は半泣きで瑠夏の腕を掴み、激しく揺さぶった。
「で」
そのたった一言で大和は自分に注意を戻させた。
そろそろ付き合うのが面倒くさくなったらしい。
「仮の彼女からステップアップして本物の彼女になってもらうには、花守さんに自信をつけてもらうしかない。文化祭という一大イベントで一緒に踊って、皆から祝福してもらうことで、秀司は花守さんが自分の彼女に相応しい女性であることを証明しようとした。ダンスの練習と並行して花守さんの店でバイトすることにしたのは、花守さんの妹さんに『バイトが急に辞めた上に姉まで怪我で働けなくなって店が回らず困ってる』って聞いたから。もちろん、バイトついでに花守さんの家族と仲良くなって外堀を埋める魂胆もあったと思うよ」
(……どうして花守食堂で働くことにしたのかと聞いたとき、秀司は社会勉強と小遣い稼ぎのためだと答えたのに)
沙良は目を伏せた。
秀司の家は金持ちだ。
高校生の身分でレンタルスタジオを何の迷いもなく借りられるくらいの額を小遣いとして貰っているのだから、働く必要なんてない。
社会勉強がしたいなら片道一時間もかけて花守食堂に通わず、近くの店で働けばいいのだ。
そもそも秀司なら肉体労働などせずとも、割の良いバイトはいくらでもあるだろう。
(秀司は本当に、私のことを、私のことだけを想って行動してくれてたんだ……)
知らなかった。
自分がこんなにも深く愛されていたなんて。
いや、知ろうともしなかった。
自分はダメな人間だからと言い訳して。
秀司に相応しくない女だと端から決め付けて、本気で愛されている可能性から目を背けた。
「……本当に、全部私のためだったのね」
涙声で言う。
瑠夏たちは沙良を見つめるばかりで何も言わなかった。
それが答えだった。
「……あのね」
沙良は目尻に溜まった涙を拭い、意を決して口を開いた。
「その。私ね。秀司のこと何とも思ってない、とか、口では可愛くないことばっかり言ってるけど。本当は……秀司のことが好き、なの」
顔から火が出そうだ。
(ああああああ言っちゃったーーー!!)
沙良は頬を押さえて身悶えするくらい恥ずかしかったのだが――
「「知ってる。」」
二人の声は見事にハモった。