ひねくれ王子は私に夢中
「私と秀司は指輪が拾得物として届けられていないか確認した後、小林さんが行った第二体育館のお化け屋敷を探してきます。他人に指輪を見なかったか尋ねるときは必ず相手を選んでください。指輪の持ち込みは校則違反だとか言って先生に密告しそうな人には声をかけないように」
「わかってるって」
ひらひらと軽い調子で山岸が手を振った。
「見つかったら班長は私に連絡お願いします」
各班の班長に任命した生徒とは既に連絡先を交換済みだ。
「もし見つからなくても三十分後――十二時四十分になったら指輪の捜索は終わりにして、全員教室に戻ってきてください」
教室の時計を見てから言う。
「まだお昼ご飯を食べてない人もいるでしょうし、長く付き合わせるわけにもいかないから、リミットは三十分。小林さんもそれでいいわね?」
「はい、十分です。見つからなかったら後は自分で探します。私のために、本当にすみません……」
小林は身体の前で両手を重ねて深々と頭を下げた。
「何か質問のある人はいますか?」
見回すが、挙手する者は誰もいない。
「じゃあ行きましょう。皆さん、よろしくお願いします」
「はーい」
「行くか」
皆が移動を開始する。
「……にいんちょって、不破くんが絡まなきゃ有能だよね」
「ほんと、不破くんが絡まなきゃね」
小林を連れて歩く歩美たちの呟きは聞こえなかったことにした。
捜索にあたって着物を汚すわけにはいかないため、沙良たちは更衣室で制服に着替えた。
ただし何故か沙良だけ狐耳をつけさせられた。
狐耳をつけないなら協力しないと秀司に言われて承諾するしかなかったのだ。
(制服に狐耳ってどういうことなの。これじゃまるっきり文化祭に浮かれた馬鹿じゃないの)
内心ブツブツ文句を言いながら、沙良は秀司と職員室前の廊下に向かった。
鍵がかけられたガラス棚の中の『拾得物展示コーナー』に指輪はなかった。
「指輪は届いてないって」
生徒会長と文化祭実行委員長の二人に確認の連絡をしてくれた秀司は自身のスマホを見てそう言った。
「そう。ありがとう。じゃあ第二体育館に行きましょう」
廊下を歩きながらも足元は注意深く見ていたが、指輪は見つからないまま第二体育館に着いた。
第一体育館より古く小さい第二体育館では、受験勉強に忙しい三年生が春から準備をしていたお化け屋敷が開催されている。
時間帯のおかげか、沙良たちは待つことなくお化け屋敷に入ることができた。
段ボールで作られたお化け屋敷は仕掛けや小物で雰囲気たっぷりだ。
窓を全て暗幕で塞がれた暗がりの中、それぞれ片手にスマホを持ち、ライトで床を照らしながらコースを少しずつ進んでいく。
「わかってるって」
ひらひらと軽い調子で山岸が手を振った。
「見つかったら班長は私に連絡お願いします」
各班の班長に任命した生徒とは既に連絡先を交換済みだ。
「もし見つからなくても三十分後――十二時四十分になったら指輪の捜索は終わりにして、全員教室に戻ってきてください」
教室の時計を見てから言う。
「まだお昼ご飯を食べてない人もいるでしょうし、長く付き合わせるわけにもいかないから、リミットは三十分。小林さんもそれでいいわね?」
「はい、十分です。見つからなかったら後は自分で探します。私のために、本当にすみません……」
小林は身体の前で両手を重ねて深々と頭を下げた。
「何か質問のある人はいますか?」
見回すが、挙手する者は誰もいない。
「じゃあ行きましょう。皆さん、よろしくお願いします」
「はーい」
「行くか」
皆が移動を開始する。
「……にいんちょって、不破くんが絡まなきゃ有能だよね」
「ほんと、不破くんが絡まなきゃね」
小林を連れて歩く歩美たちの呟きは聞こえなかったことにした。
捜索にあたって着物を汚すわけにはいかないため、沙良たちは更衣室で制服に着替えた。
ただし何故か沙良だけ狐耳をつけさせられた。
狐耳をつけないなら協力しないと秀司に言われて承諾するしかなかったのだ。
(制服に狐耳ってどういうことなの。これじゃまるっきり文化祭に浮かれた馬鹿じゃないの)
内心ブツブツ文句を言いながら、沙良は秀司と職員室前の廊下に向かった。
鍵がかけられたガラス棚の中の『拾得物展示コーナー』に指輪はなかった。
「指輪は届いてないって」
生徒会長と文化祭実行委員長の二人に確認の連絡をしてくれた秀司は自身のスマホを見てそう言った。
「そう。ありがとう。じゃあ第二体育館に行きましょう」
廊下を歩きながらも足元は注意深く見ていたが、指輪は見つからないまま第二体育館に着いた。
第一体育館より古く小さい第二体育館では、受験勉強に忙しい三年生が春から準備をしていたお化け屋敷が開催されている。
時間帯のおかげか、沙良たちは待つことなくお化け屋敷に入ることができた。
段ボールで作られたお化け屋敷は仕掛けや小物で雰囲気たっぷりだ。
窓を全て暗幕で塞がれた暗がりの中、それぞれ片手にスマホを持ち、ライトで床を照らしながらコースを少しずつ進んでいく。