ひねくれ王子は私に夢中
高校生になった西園寺はますます美しく成長し、胸元にリボンがあしらわれた可愛らしいピンクのワンピースに身を包んでいた。
中学の卒業アルバムの写真ではセミロングだった髪は背中の中ほどまで伸びている。
(あの子が西園寺さん……)
西園寺は胸の前で両手を組み、まるで祈るような、懇願するような、切なげに潤んだ目で秀司を見ている。
まるでようやく会えた恋人にでも向けるような熱い眼差しだ。
気になって秀司を見ると、沙良の横に立っている彼は『本当にこの女はどうしようもないな』とでもいうように微苦笑していた。
その表情を見て、もう大丈夫だと思った。
(大丈夫。秀司は彼女を見ても取り乱したりしていない。ちゃんと西園寺さんのことを過去の出来事として処理できてるんだわ)
心の底から安堵していると、秀司がこちらを見て、今度ははっきりと笑った。
西園寺に向けたそれとは全く違う笑みを見て、沙良も笑い返す。
(――さあ、踊ろう)
観客席の壁を見つめて、曲の開始を待つ。
一曲目の『Eternal Flower』 のイントロが流れ始め、沙良と瑠夏は指を動かし、腕を振った。
その動きに追随するように、それぞれ違う方向を向いて立つ秀司と大和も動き出す。
数秒ほど腕だけを動かしていた瑠夏と沙良は曲に合わせて立ち上がった。
大きく腕を回すように袖を振り、四人で一列になるようにフォーメーションを変え、全身を使って本格的に踊り出す。
跳ねるようにステップを踏み、腕を振り、手首を回す。
頭を跳ね上げて蝶の髪飾りがついたサイドテールを揺らし、足を動かしながらその場で回転する。
――指先まで意識して。背筋を伸ばすときは堂々と。
――ここは手首を使って、しなやかに。蝶が舞うように、優雅に。
――次は力強く床を踏んで、ぴたりと動きを止めて、四人全員で天井に向かって指をまっすぐに伸ばす――。
瑠夏の教えは沙良の身体に深く沁みついていた。
耳元で彼女の声が聞こえるほどだ。
講堂に流れるこの『Eternal Flower』 も、もう何度聞いたことだろう。
繰り返し聞いたおかげで、沙良はボーカルの息継ぎの瞬間まですっかり覚えている。
昼も夜もなくひたすら踊り続けたこの一週間、沙良は夢ですら踊っていることがあった。
リズムに乗って踊る沙良たちを観客が見ている。
子どもは目を輝かせ、大人は呆けたような顔で――みんなが沙良たちの踊りを見ている。
(そうよ、みんな、私を見て)
口元に笑みを刻んで腰を振り、腕を振り、軽やかにステップを踏む。
(いまは私が世界の主役よ。私こそが世界の中心なの)
一曲目の『Eternal Flower』が終わり、二曲目の『REVERSE』に入ると、観客がリズムに合わせて手を叩き始めた。
『REVERSE』は世界的にも有名だし、一曲目よりアップテンポな曲なのでノリやすいのだろう。
ノリ始めた観客を見て、沙良のダンスにはますます磨きがかかった。
難しい振付を問題なくこなし、両手両足を動かして滑らかにステップを踏む。
観客席の誰もが沙良たちのダンスに釘付けだ。
よそ見している観客は誰もおらず、もはや西園寺もどうでも良かった。
ただ曲に合わせて身体を動かす、それだけに夢中になる。
中学の卒業アルバムの写真ではセミロングだった髪は背中の中ほどまで伸びている。
(あの子が西園寺さん……)
西園寺は胸の前で両手を組み、まるで祈るような、懇願するような、切なげに潤んだ目で秀司を見ている。
まるでようやく会えた恋人にでも向けるような熱い眼差しだ。
気になって秀司を見ると、沙良の横に立っている彼は『本当にこの女はどうしようもないな』とでもいうように微苦笑していた。
その表情を見て、もう大丈夫だと思った。
(大丈夫。秀司は彼女を見ても取り乱したりしていない。ちゃんと西園寺さんのことを過去の出来事として処理できてるんだわ)
心の底から安堵していると、秀司がこちらを見て、今度ははっきりと笑った。
西園寺に向けたそれとは全く違う笑みを見て、沙良も笑い返す。
(――さあ、踊ろう)
観客席の壁を見つめて、曲の開始を待つ。
一曲目の『Eternal Flower』 のイントロが流れ始め、沙良と瑠夏は指を動かし、腕を振った。
その動きに追随するように、それぞれ違う方向を向いて立つ秀司と大和も動き出す。
数秒ほど腕だけを動かしていた瑠夏と沙良は曲に合わせて立ち上がった。
大きく腕を回すように袖を振り、四人で一列になるようにフォーメーションを変え、全身を使って本格的に踊り出す。
跳ねるようにステップを踏み、腕を振り、手首を回す。
頭を跳ね上げて蝶の髪飾りがついたサイドテールを揺らし、足を動かしながらその場で回転する。
――指先まで意識して。背筋を伸ばすときは堂々と。
――ここは手首を使って、しなやかに。蝶が舞うように、優雅に。
――次は力強く床を踏んで、ぴたりと動きを止めて、四人全員で天井に向かって指をまっすぐに伸ばす――。
瑠夏の教えは沙良の身体に深く沁みついていた。
耳元で彼女の声が聞こえるほどだ。
講堂に流れるこの『Eternal Flower』 も、もう何度聞いたことだろう。
繰り返し聞いたおかげで、沙良はボーカルの息継ぎの瞬間まですっかり覚えている。
昼も夜もなくひたすら踊り続けたこの一週間、沙良は夢ですら踊っていることがあった。
リズムに乗って踊る沙良たちを観客が見ている。
子どもは目を輝かせ、大人は呆けたような顔で――みんなが沙良たちの踊りを見ている。
(そうよ、みんな、私を見て)
口元に笑みを刻んで腰を振り、腕を振り、軽やかにステップを踏む。
(いまは私が世界の主役よ。私こそが世界の中心なの)
一曲目の『Eternal Flower』が終わり、二曲目の『REVERSE』に入ると、観客がリズムに合わせて手を叩き始めた。
『REVERSE』は世界的にも有名だし、一曲目よりアップテンポな曲なのでノリやすいのだろう。
ノリ始めた観客を見て、沙良のダンスにはますます磨きがかかった。
難しい振付を問題なくこなし、両手両足を動かして滑らかにステップを踏む。
観客席の誰もが沙良たちのダンスに釘付けだ。
よそ見している観客は誰もおらず、もはや西園寺もどうでも良かった。
ただ曲に合わせて身体を動かす、それだけに夢中になる。