ひねくれ王子は私に夢中
「……権平《ごんだいら》先生?」
沙良は驚いてお嬢様ポーズを解いた。
「すまん、花守。この成績順位表は間違いだ。不破の点数には化学の一教科分、点数が加算されていなかった。つまり、不破だけ五教科ではなく四教科の総合点になってしまっている」
「………………は?」
その言葉が意味することを理解した沙良の顔面はさーっと青ざめた。
「正しくはこうだ」
権平は秀司の順位と名前と点数を二重線で消し、沙良の上に『1位 不破秀司 489点』と書いた。
「……………………!!!?」
沙良は目を見開き、トップに返り咲いたその名前を愕然と見つめた。
「さて」
ぽん、と。
横から肩を叩かれて、沙良は身体を震わせた。
「いまどんな気持ち?」
太陽のような笑顔で秀司はそう尋ねてきた。
「ああああああああああ――!!」
沙良は頭を抱えて絶叫し、キッと秀司を睨みつけた。涙目で。
「順位表が間違ってること知ってて言わなかったわね!? どういうことよ、まさかこれ全部秀司が仕組んだ茶番なの!?」
「その通り。順位が変わってしまう人たち全員から承諾を得ました」
秀司は右の掌全体を使って右手を示した。
「……」
無言で右手を見ると、順位が変わってしまったらしい生徒たちは何故か揃ってVサインした。
強面の権平までVサインしている。
「……なんでうちの学校は無駄にノリの良い人ばっかりなの……」
先生までOKしているのなら文句など言えるわけもなく、沙良はがっくりと項垂れた。
「今回こそ勝ったと思ったのに……!!」
血涙を流す。
「沙良もまだまだ甘いなあ。自分が一位になった時点でおかしいと思わなきゃ」
「私が一位になったらおかしいと思わなきゃいけないのっ!?」
「それはもちろん。俺に勝つなんて百年早いよ?」
「百年って――」
言い返そうとしたそのとき、さっきの仕返しとばかりに頬を突かれた。
ぎくりとして動きを止めると、秀司は笑顔で頬をグリグリしてきた。
「『負けましたごめんなさい』ってひれ伏すまでこの手は止めないって言ったよなー? そっくりそのまま返そうかなー? さーて、いつまで我慢できるかなー?」
「……うう……」
形勢逆転。
またも敗北を突きつけられた沙良は半泣きで呻くしかなかった。
「『にいんちょ』の称号は今回も廃止できなかったね、残念だねー。この分だと卒業まで『にいんちょ』かなー? ああ、さすがに卒業までずっとクラス委員長をするわけじゃないか。だとしたら、クラス委員長を辞めた後のあだ名は『二位さん』になるのかな? それとも『二位ちゃん』?」
「ううう……私絶対好きになる人間違えた……!!」
「えー、そんなこと言わないでよ、悲しいなぁ。そうだ、罰として左頬もグリグリしよ」
「!?」
「沙良の頰はぷにぷにで気持ち良いなー。屈辱に耐えるその顔がいいね、最高だねーあははは」
「うわあ、不破くん、めちゃくちゃ良い笑顔なんだけど……」
「不破くんの愛ってちょっと屈折してるよね……」
「受け止める花守さんは大変だな……」
「頑張れ……」
ついに「負けましたごめんなさい」と泣き出した沙良を見て、生徒たちは深く同情したのだった。
沙良は驚いてお嬢様ポーズを解いた。
「すまん、花守。この成績順位表は間違いだ。不破の点数には化学の一教科分、点数が加算されていなかった。つまり、不破だけ五教科ではなく四教科の総合点になってしまっている」
「………………は?」
その言葉が意味することを理解した沙良の顔面はさーっと青ざめた。
「正しくはこうだ」
権平は秀司の順位と名前と点数を二重線で消し、沙良の上に『1位 不破秀司 489点』と書いた。
「……………………!!!?」
沙良は目を見開き、トップに返り咲いたその名前を愕然と見つめた。
「さて」
ぽん、と。
横から肩を叩かれて、沙良は身体を震わせた。
「いまどんな気持ち?」
太陽のような笑顔で秀司はそう尋ねてきた。
「ああああああああああ――!!」
沙良は頭を抱えて絶叫し、キッと秀司を睨みつけた。涙目で。
「順位表が間違ってること知ってて言わなかったわね!? どういうことよ、まさかこれ全部秀司が仕組んだ茶番なの!?」
「その通り。順位が変わってしまう人たち全員から承諾を得ました」
秀司は右の掌全体を使って右手を示した。
「……」
無言で右手を見ると、順位が変わってしまったらしい生徒たちは何故か揃ってVサインした。
強面の権平までVサインしている。
「……なんでうちの学校は無駄にノリの良い人ばっかりなの……」
先生までOKしているのなら文句など言えるわけもなく、沙良はがっくりと項垂れた。
「今回こそ勝ったと思ったのに……!!」
血涙を流す。
「沙良もまだまだ甘いなあ。自分が一位になった時点でおかしいと思わなきゃ」
「私が一位になったらおかしいと思わなきゃいけないのっ!?」
「それはもちろん。俺に勝つなんて百年早いよ?」
「百年って――」
言い返そうとしたそのとき、さっきの仕返しとばかりに頬を突かれた。
ぎくりとして動きを止めると、秀司は笑顔で頬をグリグリしてきた。
「『負けましたごめんなさい』ってひれ伏すまでこの手は止めないって言ったよなー? そっくりそのまま返そうかなー? さーて、いつまで我慢できるかなー?」
「……うう……」
形勢逆転。
またも敗北を突きつけられた沙良は半泣きで呻くしかなかった。
「『にいんちょ』の称号は今回も廃止できなかったね、残念だねー。この分だと卒業まで『にいんちょ』かなー? ああ、さすがに卒業までずっとクラス委員長をするわけじゃないか。だとしたら、クラス委員長を辞めた後のあだ名は『二位さん』になるのかな? それとも『二位ちゃん』?」
「ううう……私絶対好きになる人間違えた……!!」
「えー、そんなこと言わないでよ、悲しいなぁ。そうだ、罰として左頬もグリグリしよ」
「!?」
「沙良の頰はぷにぷにで気持ち良いなー。屈辱に耐えるその顔がいいね、最高だねーあははは」
「うわあ、不破くん、めちゃくちゃ良い笑顔なんだけど……」
「不破くんの愛ってちょっと屈折してるよね……」
「受け止める花守さんは大変だな……」
「頑張れ……」
ついに「負けましたごめんなさい」と泣き出した沙良を見て、生徒たちは深く同情したのだった。