アイビーは私を放さない
バース性
どこか薄暗い部屋は、重苦しい雰囲気に包まれている。小学六年生の私ですら、これから言われることが人生最悪のものだとわかるほどだ。

「……お嬢さんのバース性なのですが」

白衣を着た先生が椅子を動かし、真っ青な顔をする両親の方を見る。私はまるで死刑宣告を受けるかのように、ゴクリと喉を動かした。

「オメガでした」

ああ、やっぱりか……。ショックといえばショックだけど、特別驚くことはない。だって学校のバース性の結果を両親も呼んで聞くなんて、オメガ以外にあり得ない。

「そんな……!私たちは二人ともベータなんですよ!?どうして……」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

お父さんの混乱する声、お母さんの泣き叫ぶ声、先生の同情するような目、どうしたらいいのかわからない私。この部屋は異常な空気に包まれていた。



あの日から数年。私、若草美月(わかくさみつき)は日本から遠く離れたアメリカで暮らしている。アメリカの医大に留学しているからだ。
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