アイビーは私を放さない
アルバートさんの言葉に胸がキュンと音を立てる。こんな風に異性から甘い言葉を言われたことなんてない。リップサービスだとわかっていても、キュンキュンしてしまう。乙女ゲームを生で体験してるみたいだ。

「さぁ、行きましょうか」

アルバートさんはそう言い、車の助手席のドアを開けて私をエスコートした。



高級外車なんて乗ったことのない私は、緊張しながら大人しくしていた。やがて車が止まったのはとある劇場の前。

「あっ、ここって……!」

目を見開いた私にアルバートさんが微笑む。そして私の腰に腕を回しながら「ここ、来てみたかったんでしょう?」と言った。

この劇場は日本でも有名な劇団が所有しているもので、演劇の世界では一番と言っていいほど知名度がある。そんな劇団の舞台を一度でいいから見てみたかったんだ。そんな話を数ヶ月前、アルバートさんに言ったんだ。

「今日のために特等席を用意したんです」

「そんな、ここに来られただけで嬉しいのに……」
< 12 / 23 >

この作品をシェア

pagetop