アイビーは私を放さない
「アルバートさん、すみません。お手洗いに行ってきます」

テーブルに戻ってきたアルバートさんにそう言い、トイレへと向かう。トイレの鏡で自分の顔を見てみると、少し疲れたような顔をしていた。

(さっき、あんなことがあったせいかな……)

カフェを出たらもう家に送ってもらおうかな。そんなことを考えながらトイレを出ると、テーブルにはすでにカフェオレなど頼んだものが届いていた。

「美月さん。大丈夫ですか?」

「はい。すみません。もう届いていたんですね」

よく見るとカフェオレの蓋は開いていて、ミルクが入れられている。私がカフェオレを飲む時にミルクを入れるのをアルバートさんには一度話したことがあった。

「ミルクを入れる話、一度しかしたことがないのによく覚えていましたね」

記憶が正しければ、私がアルバートさんにそのことを話したのは三ヶ月ほど前だ。三ヶ月も前の雑談を覚えているなんて、すごい記憶力だと思う。アルバートさんはコーヒーを飲みながら微笑んだ。
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