アイビーは私を放さない
「美月さんは私にとって特別な人です。特別な人のことは、どんな些細なことでも覚えておきたくなるんですよ」

また胸が高鳴る。顔が赤くなっていることを知られたくなくて、私は「そ、そうですか……」と俯きながらカフェオレに口をつけた。温かいカフェオレが心を解していくような不思議な感覚がする。……うん、おいしい。

「カフェオレ、おいしいですか？」

「はい。とってもおいしいです」

カフェオレを飲みつつ、アルバートさんが頼んでくれたサンドイッチをつまむ。エビとアボカドのサンドイッチだ。これも私が好きだと言ったサンドイッチだ。

アルバートさんはさっきのことから意識を逸らすためか、劇のことを色々話題に出してくれた。それに受け答えをしていた私だったけど、何かがおかしいと思い始める。

（何でこんなに頭がぼんやりするの？何で私の前に座っていたアルバートさんが隣にいるの？）

ぼんやりする私の手をアルバートさんが優しく取る。その目はどこか熱を孕んでいて、それがただの恋愛感情じゃないことに本能的に気付いた。
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