なぜか軟禁されていました

13

「どうぞ」

リィーンはカインに、椅子をすすめる



けれど、カインは立ったまま、なかなか座ろうとしない。

なんだか難しい顔をしているけれど、どうかしたのかな

「━カイン様?」


「あ、いやすまない。ちょっと考え事を。 その、どう言えばいいものか……」


カインは、「よわったな」と言いつつ、片手で髪を軽く掻き上げる。


何か思い悩んでいる様子が伝わってくる。

悪いことでなければいいなと思いつつも、
思わずその仕草に釘付けになっている自分がいた。

かっこいい

その一言に尽きる。そう、乙女ゲームが好きだったのは、素敵な男性のスチルを眺めると癒されたから。眼福という言葉はまさに正しいと思う。荒んだ心が一気にテンションが上がって幸せな気持ちになれるから。

でも攻略対象達は確かにかっこいいのだけど、私は、年上の、そういわゆる中年くらいの方に魅力を感じる。

だから、カイン様の何気ない仕草にドキッとしてしまう。

前世の職場にも年上の男性はいたけれど、職場では仕事のことしか考えていなかった。プライベートでは時間の余裕もないし、恋愛だの出会いなどとは完全に無縁だった。

異性の友達もいなかった。今世では誰とも関わっていないし。

こういう時に、どういう風に接したらいいのか分からない。

そもそも、カイン様と私の関係は知人?になるのかな。

見回りにくる治安隊の人と保護されてる人間みたいな関係かな

とりあえず、まずは飲み物をお出ししよう

リィーンは、水をコップに注いでテーブルの上に置いた。

「あの、 お水しかないのですが、良ければどうぞ。 今日も暑いですね」

前世の世渡り術を活用し、ザ・無難な世間話、をしてみることにした。

私流の世渡り術、
よく知らない人との会話は、天候、季節関係など、当たり障りのない会話をすること。

こちらではどうなのか分からないけど、多分間違ってはいないはず。

今世ではほとんど独り言のみで育ったから。

誰かの真似をしたくても、傍に人がいないからできないし。

いずれここを出て、街中で働くことを考えたら、コミュニケーション能力も必要になってくるだろうな。

前世でも、人見知りだったから不安だな。

やはり、街がどういう雰囲気なのかとか、どんな人達がいて、どういう風に話すのか、知りたいな。

「リィーン…リィーン…リィーン?」

「えっ?は、はい。すみません、何か言われました?」

いけない、
すぐに一人の世界に入るのを気をつけなくては。

人と交流する上で、相手の話を聞くというのは大事なことなのに。

一人の環境のせいか、こういうこともできなくなってるなんて…

これからは真面目に、きちんと話しを聞こう。

そう決心すると、リィーンは姿勢を正してカインをじっと見つめた。


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