【完結】雪溶けの契約結婚

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しかし、田園調布に向かうはずのリムジンは何故か千葉の方向へ向かった。

「え…?
こっちって、江戸川区…?」

私は不思議そうに尋ねた。

そして、リムジンが着いたのは閑静な住宅街にある、赤い屋根の小さな一軒家だった。

壁はベージュで、玄関はブルー、花壇が付いていて、お菓子の家のような可愛らしい家だ。

「な…んで…?」

「あなたの好みの家を探すのに苦労しましたよ。笑
田園調布には豪勢な家ばかりデショ。
結局江戸川区まで…」

「素敵だわ!
ありがとう、調月さん!」

私は笑顔で心からそう言った。

「全く…
困った人だ…」

調月さんは大袈裟に肩をすくめる。
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