戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「シルファは俺の全てを受け入れてくれた。こんな姿でも、一人の男として扱ってくれている。俺にとって、彼女はかけがえのない存在だ。俺はシルファ以外と結婚するつもりはないし、この先の生涯で、彼女以外の女性を愛することはない」
「っ!」
「ルーカス……」
マリアベルを諦めさせるための言葉と分かっていても、心は都合よく解釈してしまう。
思わず彼を見つめると、視線に気づいたルーカスは優しく笑い返してくれた。
「う、ぐ……失礼いたしますわ!」
マリアベルは歯を食いしばって後退りをすると、執務室の入り口の扉を勢いよく開けて階段を駆け降りていった。彼女の目元には、涙が滲んでいたように見えた。
やがて足音が聞こえなくなってから、シルファはハッとした。
「あの、マリアベル様は誓約魔法をかけられていませんよね? 口止めもせずに帰してしまって大丈夫なのでしょうか……?」
シルファは不安げに瞳を揺らす。
「ああ、問題ない。あいつはプライドが高い。俺のこの姿を吹聴して彼女の利になることは何もないだろうしな」
ルーカスの言葉に安堵の息を漏らすが、マリアベルが最後に見せた涙だけは彼女の本音を表していたのではないかと思う。
気丈な態度を崩さなかったマリアベルだったが、それらしい理由を論い、自分の気持ちの後押しをしていただけなのではないか。
そう思うと、ルーカスに淡い恋心を抱く者同士、どうしても彼女を恨みきれないのであった。
◇
「っ!」
「ルーカス……」
マリアベルを諦めさせるための言葉と分かっていても、心は都合よく解釈してしまう。
思わず彼を見つめると、視線に気づいたルーカスは優しく笑い返してくれた。
「う、ぐ……失礼いたしますわ!」
マリアベルは歯を食いしばって後退りをすると、執務室の入り口の扉を勢いよく開けて階段を駆け降りていった。彼女の目元には、涙が滲んでいたように見えた。
やがて足音が聞こえなくなってから、シルファはハッとした。
「あの、マリアベル様は誓約魔法をかけられていませんよね? 口止めもせずに帰してしまって大丈夫なのでしょうか……?」
シルファは不安げに瞳を揺らす。
「ああ、問題ない。あいつはプライドが高い。俺のこの姿を吹聴して彼女の利になることは何もないだろうしな」
ルーカスの言葉に安堵の息を漏らすが、マリアベルが最後に見せた涙だけは彼女の本音を表していたのではないかと思う。
気丈な態度を崩さなかったマリアベルだったが、それらしい理由を論い、自分の気持ちの後押しをしていただけなのではないか。
そう思うと、ルーカスに淡い恋心を抱く者同士、どうしても彼女を恨みきれないのであった。
◇