戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 多くの領民は領主に見捨てられたと判断し、長く暮らしてきた家を泣く泣く手放して領地を移ってしまった。風土愛の強い領民たちは残って懸命に農作業に専念したが、到底例年通りの税収を見込むことはできず、帳簿が真っ赤に染まるまでそう時間は掛からなかった。

 そして、潤沢だと思っていた子爵家の財産も気づけば底をつき、贅沢の限りを尽くしてきたフレデリカは借金に追われることとなった。借金を返そうにも、税収は見込めず収入がないために支払いができない。借金を返済するためにさらに別の貸金業者に借金をすることを続けた結果、今では片手で収まりきらない取引先からの借金に追われている。

 数年前まではパーティや茶会の招待状で彩られていたデスクの上は、貸金業者からの借金返済の督促状で溢れている。

 せっかく買い集めた煌びやかな調度品や一度着たきりになっているドレスも苦肉の策として手放した。
 ようやく理想の空間となった子爵家も、すっかりがらんと寂しくなってしまった。

 給与の支払いも滞り、どんどんと使用人も辞職していった。辛うじて残っているのは、フレデリカが男爵家から連れてきた馴染みの者たちばかりとなっている。

 それもいつまで続くのか。
 少ない使用人たちでは屋敷の掃除も行き届かず、ところどころに埃や蜘蛛の巣が目立つようになってきている。


(私たちがこんなに苦労しているっていうのに……あの子だけがいい思いをしているなんて許せない!)


 フレデリカはすっかり短くなった爪を噛みながら、心の中で悪態をつく。





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