戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 ガバリとシルファが顔を上げると、再び銀髪の男性が静かに頷く。

 まさか、魔塔で一番偉いお方に呼び出しを喰らうとは、一体どういう用件か。もしや、知らず知らずのうちにまとうに損失を与える大問題を起こしていてその責任を取らされるのだろうか。

 シルファの背に再び冷たい汗が伝う。
 そしてハッと我に返ると、慌てて深々と頭を下げた。

 恐らくここは魔塔の最上階。そしてこの場にいるということは、目の前の彼が部屋の主ということだろう。


「失礼いたしました。オルディル卿、お初にお目にかかります。メンテナンス部所属、シルファでございます」

「顔をあげてください、シルファ様。まずは初めまして。そして、私はルーカス・オルディルではありません」

「え?」


 では、あなたは一体。そして、この部屋の主は一体何処に。

 シルファの頭に疑問符がいくつも浮かぶ中、アハハ! という無邪気な笑い声が部屋に響いた。


「ルーカス・オルディルは俺だ」

「え……」


 続いて聞こえたのは、随分と高く幼さを感じさせる声だった。

 声の発生源を探して視線を巡らせると、存在感のあるデスクの向こうに配置されたデスクチェアがゆっくりと回転してこちらを向いた。




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