戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「準備はできたな?」
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
結局、急ピッチで業務を片付けて荷造りを済ませ、その日のうちに港町ルビトへ向かうことになったのだが、いざ長距離の転移となるとどうしても腰が引けてしまう。
(二回転移魔法を経験しているけど……距離が遠い分浮遊感というか、あの奇妙な感覚の体感時間も長いってことよね)
数日分の着替えが入ったボストンバッグを抱えながら、シルファはスーハーと何度も深呼吸を繰り返している。
そんなシルファを見てルーカスは可笑しそうに肩を揺らしているのだが、どうしてそんなに余裕でいられるのか甚だ疑問である。いや、恐らくルーカスは何度も転移魔法を使っていて慣れているのだろう。魔法初心者のシルファの気持ちも考えて欲しい。
「大丈夫ですよ。距離がどれほど遠くても、転移魔法の体感時間は変わりません。一瞬空間に引き込まれるような浮遊感を覚えたらあっという間に目的地に到着しています。それに、魔法を発動するのはこの国で一番の魔導師です。安心してください」
シルファ同様ルーカスに同行するエリオットが安心させるように説明してくれた。
「ほ、本当に……?」
半信半疑の視線をルーカスに向けると、彼はニッと歯を見せて笑ってシルファに手を差し出した。
「ああ、俺を信じろ。不安なら手を握っているといい」
こちらに向けられたのはシルファよりも一回り小さな手。けれど、それはとても大きくて頼り甲斐があるように見えた。
「し、信じます」
シルファは恐る恐るルーカスに手を重ねた。指先が触れた途端にギュッと力強く握られて、思わず心臓が跳ねた。
「大丈夫だ。絶対に離さない。転移魔法を発動するぞ」
ルーカスは空いた手を床に翳した。すると、三人の足元に魔法陣が浮かび上がり、カッと強い光を放った。
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
結局、急ピッチで業務を片付けて荷造りを済ませ、その日のうちに港町ルビトへ向かうことになったのだが、いざ長距離の転移となるとどうしても腰が引けてしまう。
(二回転移魔法を経験しているけど……距離が遠い分浮遊感というか、あの奇妙な感覚の体感時間も長いってことよね)
数日分の着替えが入ったボストンバッグを抱えながら、シルファはスーハーと何度も深呼吸を繰り返している。
そんなシルファを見てルーカスは可笑しそうに肩を揺らしているのだが、どうしてそんなに余裕でいられるのか甚だ疑問である。いや、恐らくルーカスは何度も転移魔法を使っていて慣れているのだろう。魔法初心者のシルファの気持ちも考えて欲しい。
「大丈夫ですよ。距離がどれほど遠くても、転移魔法の体感時間は変わりません。一瞬空間に引き込まれるような浮遊感を覚えたらあっという間に目的地に到着しています。それに、魔法を発動するのはこの国で一番の魔導師です。安心してください」
シルファ同様ルーカスに同行するエリオットが安心させるように説明してくれた。
「ほ、本当に……?」
半信半疑の視線をルーカスに向けると、彼はニッと歯を見せて笑ってシルファに手を差し出した。
「ああ、俺を信じろ。不安なら手を握っているといい」
こちらに向けられたのはシルファよりも一回り小さな手。けれど、それはとても大きくて頼り甲斐があるように見えた。
「し、信じます」
シルファは恐る恐るルーカスに手を重ねた。指先が触れた途端にギュッと力強く握られて、思わず心臓が跳ねた。
「大丈夫だ。絶対に離さない。転移魔法を発動するぞ」
ルーカスは空いた手を床に翳した。すると、三人の足元に魔法陣が浮かび上がり、カッと強い光を放った。