戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「チッ、忌々しい」


 魔塔の先輩魔導師から押し付けられた仕事の山を睨みつけながら、ルーカスは大きく溜息を吐いた。

 ルーカス・オルディル、十三歳。
 異例の十歳で魔塔入りを果たした稀代の魔導師と言われている。

 実際、学園を飛び級で卒業して魔塔入りが決まった時は、飛び上がるほど嬉しくて、期待と希望に胸が満ち溢れていた。

 ルーカスは物心ついた頃から緻密な魔力操作に長けていた。知識欲、探究心、好奇心が人より少しばかり高く、そんなルーカスを魅了したのが魔導具だった。

 魔術式を応用した回路を道具に刻み、意図した通りに動くことが楽しくて仕方がない。無限の可能性に満ちた魔導具に、ルーカスがのめり込むのも無理はなかった。

 ルーカスはグングンと頭角を表し、幼いながらに魔塔や魔法省から注目されるようになっていた。

 より多くの人に汎用的に使用されるものはもちろん、需要は限られるが、ごく一部の人々の困りごとを解消する魔導具を作りたいと思い、魔導具開発に没頭した。

 魔塔に入れば自らの研究室が与えられ、より優れた環境で魔導具の開発に専念できる。
 ルーカスは溢れ出る好奇心を抑えながら、魔塔の扉を叩いた。

 だが、魔塔での生活はルーカスが期待したものとは程遠かった。

 始めこそ十歳で魔塔入りしたルーカスを周囲は優しく迎え入れ、様々な知識や技術を授けてくれた。


 けれど、ルーカスは彼らの想像以上に優秀すぎた。





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