戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「あら、素敵ね。すみません、こちらおいくらかしら」

「あ、それは……」


 開放市では市場に売り出す前に適正価格を見極めるために、ある程度魔塔が価格を定めるのだが、ルーカスが作成したものは今後生産の見通しがないものばかりだ。

 だから、せいぜい製作にかかった費用が回収できれば元は取れる。

 通常の魔導ランプより少し安い値段を提示すれば、「あら、それだと安すぎるわ」と一般的な魔導ランプと同等の金銭を支払ってくれた。


「素敵な魔導具をありがとう。娘もとても喜んでいるわ」

「うん! すっごく嬉しい! ありがとうございました!」


 少女の笑顔は、まるで太陽のように明るく眩しかった。ルーカスの心に巣食っていた闇が晴らされていくようだった。


「いえ……お買い上げありがとうございます」


 ルーカスは掠れた声をなんとか絞り出し、受け取った金銭をギュッと握りしめた。
 そこには確かに、ルーカスの魔導具が必要とされた証があった。

 腹の底から、忘れかけていた感情が湧き上がってくるようで、胸がグッと締め付けられた。


「お母様、ありがとう! 私、絶対このランプ大切に使うね!」

「そうね。大切に使ってあげればきっと長く使うことができるわ」

「私もいつかこんなに素敵な魔導具を作れるようになるかなあ」

「うふふ、そうね。きっと」

「えへへ、私も魔塔で働きたいなあ」

「あら、魔法のお勉強を頑張らなきゃいけないわね」

「ううっ……頑張るもんっ」


 少女と母親は和やかに会話をしながら、賑わう通りへと戻っていった。少女の腕に抱かれた魔導ランプが、太陽の光を反射してキラリと輝いている。






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