戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
(やっぱり俺は、誰かの笑顔を生み出す魔導具を作りたい)


 結局、ルーカスの店で買い物をしてくれたのは、胡桃色の髪の少女だけだった。

 けれど、この日の出来事はルーカスの沈み切っていた心に火を灯した。

 まずは年功序列制の魔塔の体制を刷新する。実力に応じて仕事を振り分け、極力希望の仕事に就いて魔導師のやる気を奮い起こす仕組みを作るのだ。

 魔導具開発の予算が取れないなら、自費で必要な道具を揃えて魔導具を作ればいい。捨てられる予定の廃品も自由に使うことができるなら試作品に使おう。
 根気強く企画書を上げて、試作品を持ち込んで製品化を目指そう。

 上が唸る魔導具を作れば、どれだけルーカスの存在が疎ましくても無視するわけにはいくまい。そこまで腐ってはいないと信じたい。

 それに何より、魔塔や魔導具に夢見て瞳を輝かせたあの少女がいつか魔塔で勤務するようになった時に、ルーカスのように失望しないような、安心して働ける場所を作りたい。


 ルーカスの黄金色の瞳には、決意の光が宿っていた。





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