戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 喉奥からルーカスへの想いが溢れ出しそうで、慌ててグッと飲み込んでから、シルファはフルフルと頭を左右に振った。


「私は幼い頃からずっと、あの魔導ランプに救われてきました。それはもう、何度も……ルーカスも、私と同じだったのですね」

「そうだな。君があのランプを今も大切に持っていてくれたと知った時は、どれほど嬉しかったことか」


 シルファがルーカスの魔導ランプにずっと支えられていたように、ルーカスもまた幼き日のやり取りを励みにしてくれていた。あの日の出会いが今日を紡いでくれている。大切に大切に扱ってきた魔導ランプが、シルファとルーカスの縁を再び繋ぎ、照らしてくれた。

 ギュッと目を閉じると、あの日母と訪れた開放市の情景が鮮明に瞼の裏に浮かび上がる。

 数多ある魔導具の中でも、ルーカスが展示していた魔導具にシルファは一番惹かれた。
 それはきっと、彼が魔導具を手にするまだ見ぬ誰かのことを思い、魔導具製作を全力で楽しんだからなのだろう。シルファが魔塔に憧れ、志したのも、ルーカスの魔導具に魅了されたからに他ならないのだ。

 シルファはゆっくりと目を開けると、窺うようにルーカスの瞳を覗き込んだ。


「ルーカス、魔力を中和してもいいでしょうか」

「ああ、頼む」


 再び目を閉じて、ルーカスの中に巡る魔力を感じ取る。

 ルーカスの話を聞き、彼が元の姿を取り戻してからのことを不安を感じるはやめようと、ようやく覚悟が決まった。





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