戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「研究に没頭していて差し出された茶を無意識のうちに受け取って口に含んでしまった。やられたと思った時にはもう飲み込んだ後だった。どうにかして媚薬を解毒できないか魔力を巡らせたが、俺は治癒魔法が得意ではなくてな。頭をフル回転させてとある方法を思いついた」


 頭の横で指をくるくる回しながら、ルーカスはまるで自分の考えた悪戯の計画を披露するかのように得意げな顔をする。


「生殖機能が未熟な子供の姿まで身体を退行させてしまえば、媚薬の効き目はなくなるのではないか、とな」


 身体を退行させるなんて魔法は聞いたこともない。万一、できたとしても媚薬の効果を打ち消すために自分の身体を退行させる選択肢を取るなんて普通ではない。


「もちろん退行魔法なんてものは試したことがない。理論だけでいうと、魔術式については昔にふとした思いつきで構築したことがあった。ただそれだけだ。だが、俺は思いついてしまった。退行魔法で媚薬に勝てるのではないか、と。思いついてしまったのだ、試さないわけにはいかないだろう? だから俺は試した。そして勝った! 俺の仮説通り、身体が未熟であれば媚薬は効き目を発揮しなかったんだ!」


 ルーカスは目をキラキラと輝かせて熱弁をしているが、シルファには到底理解のできない考えだ。もっとこう、医務室に駆け込むとか、治癒魔法が得意な職員を捕まえて解毒してもらうとか、方法は他にもたくさんあるように思えるのだが。

 思いついたからやる。

 実に研究者らしく、妙に説得力がある理由にほとほと呆れてしまう。

 両手を広げて高笑いまでしていたルーカスは、一通り笑って満足したのかフッと真顔になった。




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