戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「お気づきだと思いますが、ルーカスの退行魔法の解除を妨害している魔力のほとんどはすでに中和しました。あとは根幹に根差した魔力を吸い上げれば、全て中和できると思います」

「そうか」


 やはり自分の身体のことなので、ルーカスにもよくわかっているようだ。

 きっと、ここしばらくの間、シルファに躊躇いの気持ちがあったことも見透かされているのだろう。
 けれど、ルーカスは急かすことも責めることもせず、シルファの覚悟が決まるまで待ってくれていた。一日でも早く元の姿に戻りたいはずなのに。


「必ず、私があなたを元の姿に戻して見せます」

「ははっ、それは何よりも心強いな」


 口元を引き締めるシルファに、ルーカスはいつもの柔和な笑みを向けてくれる。
 片足を組んで膝の上に肘をつき、笑みを携えながらシルファを見つめてくる。

 その仕草一つ一つがシルファの胸を高鳴らせていることを、ルーカスは知らないのだろう。

 成長したルーカスは、一体どんな姿なのだろう。

 本来ならば、二十八歳の立派な成人男性であるルーカス。
 もうすぐ対面できると思うと、嬉しいような、恥ずかしいような。心がざわついて落ち着かない。

 子供の姿のルーカスもルーカスには違いないので、愛おしいことに変わりはないのだが、これまではシルファを見上げてくれていた黄金色の瞳を、今度はシルファが見上げる番となる。






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