戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「さて、明日は朝から役場で調査だ。魔塔に運ばれる前のメンテナンス依頼もあるようだから、手が空いた時間があればその魔導具を見てやってくれ。回路の修復はエリオットにもできるから、彼に頼むといい。まあ、君の同僚ほどの腕ではないがな」

「ふふっ、サイラスの回路修復の腕は誰にも負けませんよ」

「む、そこまで肩を持たれると嫉妬してしまうな」

「ええっ、ルーカスでも嫉妬するんですか?」

「当たり前だ。大切な妻の気持ちを独り占めしたいと思うのは、当然の権利だろう?」


 軽口を叩き合って、顔を見合わせる。そしてくすくすと肩を震わせて笑い合う。
 そんなひと時がたまらなく愛おしい。


「ああ、そうだ。これを渡しておかなくては」


 ルーカスがゴソゴソとポケットを探って取り出したのは、華奢な髪飾りだった。


「太陽と月……」


 髪飾りのモチーフとされているのは、太陽と月だった。それぞれに黄金色の石と薄い紫色の石が嵌め込まれている。


「ああ、俺たちのようだろう? 君を守りたい、そう願いを込めて作った」


 ルーカスは少し照れくさそうに視線を逸らして頬を掻いている。

 この人はどこまでもシルファの気持ちを掻き乱す。

 嬉しいという一言では言い表せないほど、胸が詰まって苦しい。


「嬉しい……毎日つけます。ありがとうございます」


 シルファはなんとかお礼の言葉を紡ぐと、髪飾りをギュッと胸に抱き締めた。





< 131 / 154 >

この作品をシェア

pagetop