戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「えっと……?」
「あんたの、あんたのせいよ……あんたのせいで……ずるい、ずるいわ……」
シルファが躊躇いがちに様子を窺っていると、フードの女性はブツブツと何やら呟き始めた。
気にせず通り過ぎてもいいものかと逡巡していると、突風が吹いて女性のフードがバサリと肩に落ちた。
「嘘……あなたもしかして、フローラ……なの?」
現れたのは、特徴的な紅色の髪と桃色の瞳。
だが、そのいずれもがシルファの知る姿とは大きく様相が異なっていた。
かつては艶々に磨き上げられていた長い髪は、すっかり艶を失い、色もくすんでいる。毛穴ひとつなかった真っ白な肌はボロボロで、美しかった義妹の面影はない。
まるで何かに取り憑かれたように同じことばかり呟きながら、胡乱な目でシルファを見つめてくる。いや、シルファを見ているようで、目の焦点が合っていない。
どこか不気味な様子に、シルファは思わずたじろいで数歩後退りをした。
「あら、久々の姉妹の再会だというのに、随分と酷いじゃない」
「なっ……!」
突然背後から耳元に囁きかけられ、耳を押さえて振り返る。
まとわりつくようなねっとりとした声。忘れるわけがない。
「ど、どうしてあなたがここに……」
フローラと同様に、外套に身を包んで現れたのは、継母のフレデリカだった。
浅く被られたフードから覗く真っ赤な唇が歪な笑みを浮かべている。
シルファの身体からサッと血の気がひき、思わず身体が震える。
あの日、魔塔に売られたあの日に、もう二度と会うことはないと思っていたのに――
「本当に、酷いわ。手紙に返事も寄越さないなんて。薄情で、ほんっと……手がかかる娘なんだから」
「あっ!?」
フレデリカが腕を持ち上げ、何かのボタンを押した。目の前で紫色の光が弾け、あっと思った時にはすでに意識が吸い取られるように沈んでしまっていた。
◇
「あんたの、あんたのせいよ……あんたのせいで……ずるい、ずるいわ……」
シルファが躊躇いがちに様子を窺っていると、フードの女性はブツブツと何やら呟き始めた。
気にせず通り過ぎてもいいものかと逡巡していると、突風が吹いて女性のフードがバサリと肩に落ちた。
「嘘……あなたもしかして、フローラ……なの?」
現れたのは、特徴的な紅色の髪と桃色の瞳。
だが、そのいずれもがシルファの知る姿とは大きく様相が異なっていた。
かつては艶々に磨き上げられていた長い髪は、すっかり艶を失い、色もくすんでいる。毛穴ひとつなかった真っ白な肌はボロボロで、美しかった義妹の面影はない。
まるで何かに取り憑かれたように同じことばかり呟きながら、胡乱な目でシルファを見つめてくる。いや、シルファを見ているようで、目の焦点が合っていない。
どこか不気味な様子に、シルファは思わずたじろいで数歩後退りをした。
「あら、久々の姉妹の再会だというのに、随分と酷いじゃない」
「なっ……!」
突然背後から耳元に囁きかけられ、耳を押さえて振り返る。
まとわりつくようなねっとりとした声。忘れるわけがない。
「ど、どうしてあなたがここに……」
フローラと同様に、外套に身を包んで現れたのは、継母のフレデリカだった。
浅く被られたフードから覗く真っ赤な唇が歪な笑みを浮かべている。
シルファの身体からサッと血の気がひき、思わず身体が震える。
あの日、魔塔に売られたあの日に、もう二度と会うことはないと思っていたのに――
「本当に、酷いわ。手紙に返事も寄越さないなんて。薄情で、ほんっと……手がかかる娘なんだから」
「あっ!?」
フレデリカが腕を持ち上げ、何かのボタンを押した。目の前で紫色の光が弾け、あっと思った時にはすでに意識が吸い取られるように沈んでしまっていた。
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