戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「うふふ、お馬鹿なあなたにも分かるように説明してあげる。あなたは私に二度売られたの。いい? あなたが支払いに応じていればこんなことにはならなかったのよ? これであなたは彼のもの……あなたが大人しく従っていれば、私たちは定期的に彼の援助を受けられることになっているの。間違っても逃げ出そうなんて考えるんじゃないよ。これからの人生を賭けて、私たちが贅沢に生きるための犠牲になってちょうだい」


 そう言って狂ったように高笑いをするフレデリカを、シルファはキッと睨みつける。

 腹の底から沸々と怒りが湧いてくる。
 ふざけるな。人をなんだと思っている。尊厳も何もない。バカにするのも大概にしろ。

 喉元までシルファの心の叫びが迫り上がってくるが、グッと堪える。ここで怒りをぶつけたところで状況が好転するとは思えない。

 シルファはギリッと奥歯を噛み締めて、肩を上下させながら平静を保とうとした。


「じゃあ、私たちは屋敷に戻るわ。すぐに換金して支払いを済ませなくっちゃ。さあ、フローラ。久しぶりに新しいドレスを買いましょうね」

「本当? 嬉しいわ!」


 フレデリカとフローラはキャッキャと楽しそうに笑い合いながら、部屋から出ていった。




 ――一度もシルファの方を振り返ることなく。






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