戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 思わず壁に背をつけて座り込み、反射的に頭を両手で庇う。
 ガラガラと瓦礫が崩れる音と衝撃、目の前は土埃で覆い尽くされてしまった。

 しばらくして、巻き上がった土埃が晴れ、眩しい太陽の光が差し込んだ。
 目を眇めて天井――いや、つい先程まで天井だった場所を見上げる。
 そこに覗くのは鱗雲が浮かぶ青く高い空。そして、差し込む太陽の光はとても暖かで眩い。

 崩れた天井の下敷きになったらしいデイモンの呻き声が聞こえてくるが、シルファは無傷だ。そのことに気づいて周囲を確認すると、どうやら結界魔法で守られているらしい。

 後頭部で留めた髪飾りがほんのり熱を発しているため、ルーカスがくれた髪飾りがシルファを守ってくれたのだろう。


「シルファ!」

「……ルーカスっ!」


 どこか冷静な頭で分析していると、天井から一つの人影が降ってきた。

 今、無性に会いたいと願っていた人物が、ゆっくりと地面に降り立った。

 結界魔法が解除され、シルファはよろけながらも必死でルーカスの元へ走り、無我夢中で彼に抱きついた。


「無事だったか……遅くなってすまない」

「いえ、いえ……!」


 シルファの方がずっと大きいはずなのに、ルーカスの腕にすっぽりと包みこまれる。


(私の太陽……私を照らしてくれる大好きな人)


 シルファの目から、一筋の涙が溢れた。


「ぐ、ぐぬうう……よくも!」


 再会の感動を味わっていると、背後で瓦礫が弾け飛んだ。すぐさまルーカスが結界魔法を展開し、破片が結界に衝突してバラバラと崩れ落ちていく。

 肩で息をしながらゆらりと立ち上がったデイモンは、額の血を拭いながらルーカスに手を翳している。





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