戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「そうか、貴様……貴様がルーカス・オルディルだったのか」

「そうだ。デイモン、お前には失望したぞ」


 いつもの温和な笑みは消え失せ、憎しみに表情を歪ませるデイモンをルーカスは正面から見据える。


「口を慎めよ、デイモン。お前の悪事は全て露見している」

「な、何をおっしゃるやら。皆目見当もつきませんな」


 ルーカスの追求に、デイモンは頬を引き攣らせて瞳を忙しなく揺らしている。


「誘拐未遂に監禁だけじゃない。お前は魔導具が想定よりも早く修理を必要とするように、回路に細工していたのだろう? 痕跡をほとんど残さない技術は俺が見ても素晴らしいものだった。その腕をもっと他のことに向けるべきであったがな」


 ルーカスの口から紡がれる驚くべき事実に、シルファは思わずデイモンに視線を向けた。

 執拗にシルファに付き纏ってきたことを除けば、デイモンはよき上司であった。不遇なメンテナンス部を任されながら、シルファたちを放り投げることをせずにきちんと面倒を見てくれていた。魔導具にかける思いだけは本物だと、そう信じていたのに――


「ふ、ふはは……! まさかそこまで辿り着いていたとは、驚きましたよ。流石は魔塔の主といったところでしょうか。ええ、そうですよ。僕の元に回ってくる市場に出る最終段階の魔導具に、ちょいと細工をさせていただきました。そうでもしないと、メンテナンス部の存続は難しかったのですよ。あなたなら分かるでしょう?」


 何がおかしいのか、肩を揺らしながら顔を歪めるデイモンに、シルファは我慢ができずに叫んでいた。


「分かるわけない! 使い物にならなくて早々に手放された魔導具がいくつあったと思っているの。本来なら、もっと長い間持ち主と共にあれたはずなのに!」





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