戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 その目元がほんのりと赤みを帯びている。ルーカスの瞳に映るシルファもまた、頬が赤く染まっている。


「シルファ、ずっと君に言いたかったことがある」

「……はい、私もです」


 ルーカスは愛おしげに瞳を細め、コツンとシルファと額を合わせた。


「愛している。シルファのおかげで、元の姿に戻ることができた。これで当初の契約は履行された。君はこの婚姻を終わらせることができる。だが、俺はこの先もずっと、シルファに側にいて欲しい。もう君なしでは夜も眠れそうにない。これからも、俺の妻でいてくれるだろうか?」


 いつも自信満々な彼の少し所在なさげな掠れた声が、愛おしくてたまらない。


「嬉しい……私もお慕いしています。許されるなら、生涯をあなたと共に」


 熱いものが込み上げて、シルファの頬を濡らしていく。

 ルーカスの大きな手がシルファの頬を包み、頬を濡らす雫を拭ってくれる。

 二人は微笑み合い、力強く抱きしめ合った。


 夕日が照らす中、海岸に伸びた長い影が、一つに重なった。






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