戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました

エピローグ

「流石にこの部屋を片付けるにはあと数日は欲しいね」

「ええ、せめて人手が欲しいわね」


 シルファは同僚のサイラスと共にメンテナンス部が配置されている地下室を掃除しながら深いため息をついた。

 デイモンを拘束したあの日、港町ルビトでの調査を終えたシルファたちは、その日のうちに魔塔へと帰還した。

 ルビトはスペンサー伯爵領と隣接しており、デイモンが手を加えた魔導具の多くが流されていたためにメンテナンスの依頼量が他の都市と比べて多かったことが分かった。

 デイモンの細工は、彼の好きなタイミングで蓄積した魔力を暴発できるものだった。
 シルファが最上階に席を移してから依頼数が急増したのは、単にデイモンの嫌がらせだったのだろう。

 一歩間違えれば大事故にも繋がりかねない工作ということで、重い罪に問われることになるだろうとルーカスが教えてくれた。

 継母のフレデリカと義妹のフローラも、シルファ誘拐の共犯ということで取り調べを受けた。そして、多額の借金返済も兼ねて、地方に送られ強制労働の刑が言い渡された。

 子爵位は国に返上することとなり、屋敷や家財は全て没収。領地や領民は国の管轄下に置かれて運営されることが決まった。

 こんな状況でも領地を捨てずに奮闘してくれていた領民のことが気がかりであったが、国から役人が派遣されて再興に向けて動き出している。


「まさか、部長が不正をしていただなんて……未だに信じられないよ」

「本当にね……」


 必要な書類や記録を箱に詰めながら、サイラスは瞳を伏せた。
 魔導師としてのデイモンを尊敬していたサイラスにはショックが大きかったらしい。
 あの一件からすでに季節が一つ進み、もうすぐ春が訪れようという頃合いとなっているが、なかなか折り合いがつけられないようだ。



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