戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 色々と合点もいったが、そのことはシルファがここに呼ばれたことと何ら関係ないように思える。話の終着点が見えずに困惑の色を深めるシルファに、ルーカスは一息ついてから今日一番の悪い笑みを浮かべた。


「さて、君は国の重要機密事項を知ってしまったことになる」

「……あっ!」


 シルファは今更ながら、ルーカスの話そのものが国の重要機密事項であることに気がついた。しかも、シルファは誓約魔法を施されていない。

 一体何が目的なのか。
 厳重処分を下してシルファを魔塔から追い出すつもりなのだろうか。

 疑念の目で、ルーカスの黄金色の瞳を見つめ返す。


「ここからが本題だ。シルファ嬢、俺と契約結婚をしないか?」

「…………えっ?」


 今、なんと言ったのだろう。契約、結婚?

 予想外の単語が飛び出してきたため、シルファはパチパチと目を瞬くことしかできない。


「悪いが、君のことは調べさせてもらった。といっても、魔塔の職員なのだから、ある程度のことは把握しているのだが……俺は、シルファ嬢の魔力を吸収し、中和する特殊な力に退行魔法解除の手がかりを見出している」

「私の力?」

「ああ。少しずつ俺に刻まれた退行魔法の術式から、魔力を吸い取ってもらう。地道に魔力を吸い取っていけば、いずれは退行魔法を解除することができるかもしれない」


 確かに、ルーカスの退行魔法解除の妨害となっている膨大な魔力を吸い取ることができれば、彼は元の姿に戻れるかもしれない。だが、それならば結婚せずとも助力は惜しまない。どうしてわざわざ結婚する必要があるのだろうか。




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