戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「それにしてもこの数ヶ月は本当に忙しかったよ……」

「目が回りそうだったわよね」


 デイモンの不正については、嘘偽りなく魔塔内に知らされた。
 デイモンの罪を暴いたルーカスを称賛する声もあれば、長きに渡りデイモンを泳がせてしまっていたことを追求する声も上がった。

 ルーカスは魔塔の最高責任者として、今回の件を重く捉え、魔塔の仕組みを刷新することを提唱した。

 実力や適性に応じて配置換えを行い、どの部署も等しく重要で尊重すべき仕事をしていると明言した。魔塔の上層ほど緻密で難解な作業を行う部署が配置されていたが、「上層の部署ほど偉い」という構図を壊すために魔塔内の部署の配置もガラリと変えることになった。関連部署を近くに配置し、横の連携が取りやすいように作業の流れを意識した配置が考えられているところだ。

 各部署や研究室はものが散乱してすぐに移動できる状態ではなかったこともあり、次の春に向けて一冬かけて準備が進められた。

 通常業務と並行して作業の引き継ぎや部署の引越し準備に終われ、魔塔に所属する魔導師は皆多忙を極めた。さらには春を迎える前に予定されていた開放市は生まれ変わった魔塔のアピールの場となるからと、予定通り開催が決まったのでてんてこ舞いであった。

 とりわけルーカスは、元の姿に戻ったことで最上階から積極的に外に出て姿を見せるようになった。彼を取り巻く様々な噂話を一蹴し、生来のカリスマ性を発揮して魔塔を改めて一つにまとめ切った。

 冷徹魔導師と名高い魔塔の主が、実は気さくで面倒見のいい美丈夫だということで、今やルーカスに認められることが魔塔で働く魔導師の目標でありモチベーションとなっている。


 そしてもう一つ。
 ルーカスに関して魔塔の全員が認識を改めることがあった。





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