戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 毎日定時過ぎまでメンテナンスの作業を行い、それから開放市の準備をする日々が三ヶ月ほど続いた。毎晩フラフラになり突っ伏すようにベッドに倒れ込んで泥のように眠った。

 ルーカスはそんなシルファよりもさらに遅くにベッドに入り、シルファが起きるよりも早くに仕事を始めていた。

 本人はやりがいがあって毎日楽しくて仕方がないと言うのだが、側で見ているシルファはずっとヤキモキさせられていた。

 魔塔の最上階に向かう昇降機を待ちながら、ルーカスを見上げる。
 すっかり大きくなったという表現も適切ではないのだが、元の姿に戻ったルーカスは想像していたよりも逞しくてずっとずっとかっこいい。

 子供の姿であれ、ルーカスには違いないので、彼を愛する気持ちに偽りはなかったのだが、元の姿に戻ってすぐは、側に来られたり触れられたりすると心臓が飛び出そうになって慣れるのに時間がかかってしまった。

 元の姿に戻ってからというものの、ルーカスはこれまで我慢していた分、事あるごとにシルファに愛を囁いてくる。それが嬉しくて、くすぐったくて、恥ずかしくて、シルファは幸せで仕方がない。


「ルビトではデートどころじゃなかったからな。落ち着いたら、二人でゆっくりと出かけよう」


 いつか一人で街を歩いていたときに願ったこと。

 元の姿に戻ったルーカスと並んで外を歩きたい。

 ようやくその願いが叶うのだと、シルファは胸が熱くなる。


「はい! そのためにも、まずは開放市を成功させましょう」

「ああ、そうだな」





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