戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 シルファは、カーソン子爵家の生まれだ。
 優しく温厚な母と、愛娘にはとびきり甘い父の間に生まれた。

 だが、母はシルファが十歳を迎える前に病没し、父も五年前に落馬事故で命を落とした。

 それからの子爵家は、後妻としてやってきたフレデリカと、その連れ子であるフローラに乗っ取られてしまった。

 父が亡くなってから、温厚だと思っていたフレデリカは豹変した。いや、本性を現したというべきか。

 あっという間にシルファは部屋や私物を取り上げられ、使用人部屋に押し込められた。そして家事の一つもしたことがなかったが、使用人同然の扱いを受けてきた。幼い頃から世話をくれていた侍女たちが、シルファを憐んで彼女たちの技術を懸命に教えてくれたおかげで、今や身の回りのことは自分一人でできるようになっている。

 男爵家出身のフレデリカは、大層外面を気にするらしく、流行最先端のドレスを何着も購入し、宝石商を何人も呼びつけてアクセサリーを買い漁った。身の回りのものは全て一級品を。そう言いながら屋敷の骨董品はすべて売り払い、ゴテゴテとした装飾品を買い付けた。

 そんな母を持ったフローラもまた、我が身を着飾ることばかり考える子に育っていた。一度着たドレスは二度と社交の場で着ない。子爵家には再び日の目を見ない哀れなドレスがたくさんクローゼットに吊るされている。

 そうして、散財癖のある継母と義妹はあっという間に子爵家の財産を食い潰した。



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