戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 入れ替えで購入した魔導具は確かに高性能だ。けれど、どこか無機質で温かみがなく、屋敷のあちこちに染みついた両親との思い出まで売り払われてしまったようで心が痛んだ。

 そうしてシルファは、無能で役立たずと罵られながら、給与の支払いを渋って使用人を必要最小限残して解雇したフレデリカたちの身の回りの世話をさせられ続けてきた。

 耐え忍ぶ日々が長く続き、そしてとうとう借金にまで手を出し始めて返済に困窮するようになったフレデリカにより、シルファは魔塔に売られた。

 どういうわけか魔力量だけは多いため、実験体になるなど少しは使い道があるだろうというのがフレデリカの主張だ。

 魔塔は身寄りがない子や、魔力が強すぎて日常生活をするには危うい子など、事情がある子を引き取り、魔法の使い方を教えたり、仕事を与えたりすることがある。

 場合によっては金銭を払うこともあるという話を、フレデリカはどこからか聞きつけたようだ。

 表に出せない無能を子爵家から追い出せるだけでなく、縁まで切ることができる。これほど好都合な売り先はない。



 こうしてシルファは戸籍ごと魔塔に売り飛ばされ、生家である子爵家との関わりを断たれた。


 シルファ・カーソンは、ただのシルファとなった。




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