戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 すうすうと規則的な寝息を立て始めた頃、執務室に続く扉が音を立てずに開かれた。

 顔を出したのはルーカスだ。


「眠ったようだな」


 ルーカスはシルファを起こさないように静かにベッドサイドに移動し、魔導ランプにほんのり照らされたシルファの寝顔を見つめた。その眼差しは柔らかく、優しげだ。


「まだ、持っていたのだな。丁寧に手入れがされている」


 ルーカスはポツリと呟いて魔導ランプを懐かしむように撫でた。

 そっと灯りを消し、シルファの頭を撫でてから、再び音を立てずに執務室へと戻っていった。





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