戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 元貴族令嬢ながら料理ができるというシルファの過去を詮索せずに受け入れてくれることもありがたかった。

 エリオットがルーカスを呼びに行き、半ば引きずるようにキッチンにやってきたところでシルファも椅子に腰掛けた。

 食事中もルーカスは思いついた魔術式や構築式について、シルファには到底分からない理論を用いてエリオットに語りかけている。本当に彼は魔法や研究が好きなのだろう。

 エリオットはこの難解な話を理解しているのかと感心していると、シルファの羨望の眼差しに気づいたらしい彼は首を振った。


「この人はただ魔法のことを話していたいだけなので、聞き流していいですよ」


 と、本当に無関心だというように黙々と食事を続けた。


「お前……」


 ルーカスは呆れたような、怒ったような表情を見せたが、不意にシルファに視線を向けた。


「すまん。いつもこういう調子だから、つい。つまらなかっただろう」

「いえ。貴重なお話で興味深いです。私は魔法の才がありませんから、魔法に関しては基礎しか教わっていなくて……理解できないのがもどかしいです」


 父が生きていた頃は、魔法の原理や基礎について家庭教師から教育を受けていた。

 けれど、継母たちに子爵家を乗っ取られてからは、学ぶ機会も奪われてしまった。そろそろ応用や実践をというタイミングだったこともあり、とても悔しかったことを覚えている。

 魔法への理解が乏しいと正直に告白すると、ルーカスは考え込んだように顎に手を当てた。




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