戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 その日の夜。


「エリオット。調査の進捗はどうなっている」

「ええ、なかなか尻尾を出しませんが、気になることがいくつか」


 シルファが寝入ったことを確認してから、ルーカスは執務室に戻ってエリオットに調査結果の報告を求めた。

 魔導具の不具合が多発している要因を探るべく、メンテナンス部の対応件数の推移、生産年月日の記録の確認、依頼者の情報などを確認していたエリオット。そして優秀な右腕は、不審な点を見つけたと言う。


「生産日から浅い年月でメンテナンス依頼が来た魔導具には、とある共通点がありました。市場に卸される前の最終チェック担当者欄に、デイモン・スペンサーの名が記されていました」

「……そうか」


 デイモンには魔導具の品質管理室を任せている。
 市場に卸しても問題ない品質を保てているか、回路に異常はないかなど、魔塔から旅立っていく魔導具たちの最終チェックを行なっている重要な部門だ。

 デイモンが何か魔導具に細工をしている可能性がある。だが、魔力操作に優れたデイモンは、その痕跡を一切残していない。可能性や疑惑だけで彼を裁くことはできない。


「デイモン・スペンサーについて、他にも気になることが」


 エリオットがパラリと報告書を捲る。金縁の眼鏡が、ルーカスのデスクに置かれたランプの光を反射している。

 ルーカスが無言で続きを促すと、エリオットは独自調査結果を報告した。





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