戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
 本人に自覚があるのかは定かではないが、ルーカスは無自覚に甘い言葉をかけているし、彼女を見つめる眼差しには熱が篭っている。

 きっともう、ルーカスにとってシルファはかけがえのない存在となっているのだろう。
 そして、それはルーカス自身も自覚しているはずだ。

 エリオットはやれやれと肩を竦め、報告書をルーカスのデスクに置いてから執務室を出ていった。


 ルーカスは報告書の束をしばらく睨みつけてから、徐に立ち上がった。

 音を立てずに寝室に入ると、橙色の穏やかな光がベッドサイドを照らしている。

 シルファは今日、久しぶりに魔導ランプをつけて眠っていた。

 そっと近づいて様子を窺うと、シルファは安心したように穏やかな寝息を立てて眠っている。


 彼女を守りたい。何に替えても。


 ルーカスはそっとシルファの頬を撫でながら、決意を新たにした。





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