戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました

第三章 近づく距離

 久々の街歩きから半月。
 魔導具のメンテナンスをしたり、ルーカスの仕事の補助をしたりと穏やかな日々を過ごしている。もちろん毎日ルーカスの魔力の吸収も行っている。

 デイモンに遭遇したあの日以降、一度だけ街に降りたけれど、エリオットが同行してくれたため平和に買い出しを済ませることができた。

 ルーカスはシルファが一人にならないように取り計らってくれているようで、少々過保護すぎやしないかと思うものの、その心遣いがとても嬉しかった。


 そんなある日、ルーカス宛の手紙や書類を仕分けていると、一通の手紙が目に留まった。

 ルーカス宛には魔塔の各部署からの申請書や承認依頼、それに魔法省からの書類など、大量の手紙が届く。仕事に関わるものは決まった封筒を使用する決まりとなっているため、薔薇の花の模様が描かれた封筒は異彩を放っていた。

 どことなく見覚えがあるような、そんな気がして宛名を見ると、なんとシルファ宛だった。

 差出人の名前は書かれていない。シルファには魔塔の外に手紙をくれるような友人はいない。一体誰からの手紙だろう。

 不審に思いつつも、デスクの引き出しからペーパーナイフを取り出して素早く封を切る。


「何よ、これ」


 そして手紙に記された内容を見たシルファは愕然とした。




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