戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
「まずは簡単なものから作ってみようか。このインクの補充が不要な羽ペンはどうだろうか」

「はい! 魔力で圧縮したインクを含ませて、文字を書いているときに一定の間隔でインクが循環する仕組みを回路で組めたら面白いなと思っているのですが……」


 溢れ出そうになった言葉をグッと飲み込み、ルーカスと共にノートを覗き込んでこれまでに記してきたアイデアを辿るように指でなぞる。


「仕組み自体は面白い。だが、それだけだといずれインク切れを起こすだろう。例えば、増幅魔法の術式を組み込んで、インクの残量が一定量を切ったことを合図にして増幅魔法を発動させる。増幅魔法によってインクが満たされるようにすれば半永久的に使えるんじゃないか?」

「な、なるほど……! 増幅魔法。そっか、どうして思いつかなかったんだろう……二人で知恵を合わせれば、どんどんいいアイデアが浮かびますね」


 これまでは密かに黙々とノートにアイデアを記載するだけで、それを実現させる予定も希望もなかったのに、シルファは今、新たな魔導具制作に携わっている。

 楽しい。

 ルーカスの補助ありきのものであるが、表情が緩んで仕方がない。

 その後も、二人でああだこうだと意見を述べ合い、回路の設計図を書き始めた。時折、エリオットも助言をしてくれて、三人で頭を悩ませながら構築を続けた。

 業務の隙間時間を使い、数日かけて設計図を書き上げ、とうとう試作品が完成した。




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