隼翔くんの好きな人
でもこの本なら、飾り付けの仕方とが書いてある………。
あったら便利かな。
でも、押し付けてるみたいで迷惑になるかも。
「へー。そんな本あるんだ。それいいな」
「きゃあっ」
突然後ろから声をかけられて思わず悲鳴をあげてしまった。
「わり。驚かせるつもりはなかったんだけど」
後ろを振り返ると、井崎くんが立ったまま私の持っている本を覗き込んでいた。
「あ、な、なんで………」
「ん?ああ、今英語の予習してたんだけどさ、辞書忘れたことに気づいて。英語の先生人から借りるとすげぇ怒るだろ。だから借りに来たんだ」
「………はい」
「はい?」
わあああ!無理だ!喋れない!
取り敢えずで絞り出した返事はどう考えてもおかしくて、井崎くんはコテンと首を傾げている。
「ね、それ。文化祭の出し物調べてくれてたん?」
井崎くんの言葉にどう反応するべきか悩む。
目が合わないよう俯いたままあちこちに視線を動かした。