隼翔くんの好きな人
これ、頷いたら物凄く恩着せがましいんじゃ!?
朝の話盗み聞きしてたのバレちゃうし。
そんなの気持ち悪いよね。
「青野さん」
「は………い」
私の名前、覚えてくれてるの?
「今日、放課後時間ある?」
「は、い」
「よっしゃ。じゃあその本持って教室いてね」
井崎くんは手を振る代わりに片手で持った辞書をブブン左右に振って去って行った。
びっっっくりしたあ。
✽✽✽
「何これ!?めっちゃ良いじゃん!簡単そう!しかも可愛い!」
「だろ。青野さんが昼休みに探してくれたんだ」
「うわーん!青野さんありがとう」
………これはどういう状況なんだろう。
アイドルみたいに可愛い佐知さんが、私の机の前に膝をついて座って涙目で私の手を握っている。
その斜め後ろでは井崎くんが得意気な顔で立っていた。
教室には佐知さんと、佐知さんといつも一緒にいる園都さん。それから井崎くんと、井崎くんの友達の瀬田くんがいる。
四人とも言わずもがなクラスの中心人物だ。